はじめての特殊清掃亡くなった後の部屋を、最初に任せる一社を。

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コラム/費用と見積

請求額が妥当か分からないとき国が示した目安は、
数字まで書いてあります。

退去にあたって原状回復の費用を請求された。金額の根拠が分からないまま、払うべきか迷っている。そういう段階の方に向けたページです。

国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」という資料を公開しています。負担割合の決まり方が、年数と施工単位まで書かれています。ここでは、請求書と照らし合わせられる形で引きます。

はじめに──これは法律ではありません

先に、このガイドラインの強さを正確にしておきます。ガイドライン自身が、こう断っています。

ガイドラインは、あくまで負担割合等についての一般的な基準を示したものであり、法的な拘束力を持つものでもない

国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成23年8月1

「ガイドラインに書いてあるから払わない」とは言えない、ということです。

それでも実務で効きます。国が示した一般的な基準なので、これと違う請求をするなら、違う理由の説明が要るという位置に立てるからです。交渉の道具ではなく、話を具体的にするための共通の物差しだと考えてください。

原状回復とは、入居時の状態に戻すことではありません

いちばん誤解されている点です。ガイドラインは原状回復を、こう定義しています。

原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

同ガイドライン 表21

Q&Aの部分では、さらに噛み砕いています。

賃貸借における原状回復とは、賃借人が入居時の状態に戻すということではありません。

汚損や損耗が経年変化による自然的なものや通常使用によるものだけであれば、特約が有効である場合を除き、賃借人がそのような費用を負担することにはなりません。

同ガイドライン Q&A1

次の入居者を確保する目的で行う設備の交換や化粧直しなどのリフォームは、賃貸人が負担すべきとされています1。民法も、原状回復義務の範囲から通常損耗と経年変化を除いています2

年数が経つほど、負担割合は下がります

同じ傷でも、新品を傷つけた場合と、10年使った物を傷つけた場合で負担が同じでは公平を欠く。そこでガイドラインは、経過年数による減価を採り入れています。

賃借人の負担については、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させることとするのが適当である。

同ガイドライン1

減価の仕方には具体的な数字があります。法人税法と「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を参考にしたもので、平成19年の税制改正で残存価値が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになったことを踏まえた形です1

部位経過年数の扱い
壁(クロス)6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定して負担割合を算定1
カーペット6年で残存価値1円1
襖紙・障子紙・畳表経過年数を考慮しない。消耗品としての性格が強く、減価償却資産の考え方になじまないため1
フローリングの部分補修経過年数を考慮しない。部分補修で全体の価値が高まったとは評価できないため(全体を張り替えた場合は考慮する)1

つまりクロスの張替えを請求されていて、貼ってから6年以上経っているなら、価値としては1円まで下がっているという計算になります。

実務では「入居年数」で代替します

設備をいつ交換したかの履歴を、貸主や管理会社が完全に把握しているケースは多くありません。入居時に経過年数を示されても、借りる側は確認できません。

そこでガイドラインは、経過年数のグラフを入居年数で代替する方式を採用しています1。入居時点の状態が価値100%とは限らないので、出発点をどこにするかは契約当事者があらかじめ協議して決めるのが適当、とされています1

年数が過ぎていれば何をしてもいい、ではありません

ガイドラインは、経過年数を超えた設備等を含む物件でも、賃借人が善良な管理者として注意を払う義務を負うことは言うまでもない、としています1

挙げられている例は、クロスに故意に行った落書きを消すための費用です。まだ使える設備を故意・過失で使用不能にした場合は、本来機能していた状態まで戻す負担が生じることがあります1

「部屋全体の張替え」を、そのまま負担する必要はありません

ここが請求書でいちばん金額が動くところです。ガイドラインの原則は明快です。

原状回復は、毀損部分の復旧であることから、可能な限り毀損部分に限定し、毀損部分の補修工事が可能な最低限度を施工単位とすることを基本とする。

同ガイドライン (3)賃借人の負担対象範囲1

問題は、実際の工事がそれより広くなる場合です。クロスは一部の傷でも、他の面と色や模様を合わせないと商品価値を保てないため、部屋全体を張り替えることが多くあります。この差をどちらが負担するのか。ガイドラインの答えはこうです。

いわゆる模様あわせ、色あわせについては、賃借人の負担とはしない

同ガイドライン 別表21

色や模様を一致させるのは賃貸物件としての商品価値の維持・増大という側面が大きい、という理由です1。部位ごとの負担単位も示されています。

部位賃借人の負担単位
原則1枚単位。毀損が複数枚にわたる場合はその枚数1
フローリング原則㎡単位。毀損が複数箇所にわたる場合は当該居室全体1
カーペット・クッションフロア毀損が複数箇所にわたる場合は当該居室全体1

受け取った請求書と、この表を並べてください。「1室分」「一式」としか書かれていないなら、まず内訳を求めるのが先です「一式」の見積書)。

貸主の負担とされている例も、書いてあります

別表1には、部位ごとの区分が並んでいます。請求書に出てきやすいもので、ガイドラインが賃貸人負担が妥当としている例を挙げます。

  • 消毒(台所、トイレ)──消毒は日常の清掃と異なり、賃借人の管理の範囲を超えている1
  • エアコンの内部洗浄──喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において必ず行うとまでは言い切れない1
  • 浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のため行うもの)──物件の維持管理上の問題1
  • 次の入居者確保のためのクリーニング──次の入居者確保のためのものであり、賃貸人負担1

逆に、タバコ等のヤニ・臭いは「通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多い」とされ、賃借人の負担になり得る側に置かれています1

このガイドラインに書かれていないこと

当サイトが扱っている場面について、正直に書きます。ガイドライン本文(173ページ)からテキストを抽出し、空白を除いて機械検索しました(2026年8月11日実施)。

検索した語件数
特殊清掃0
孤独死0
臭気0
消臭0

「死亡」は3件ありましたが、いずれも巻末の裁判例で、賃貸人や賃借人が亡くなって地位が承継された経緯の説明でした1。汚損の話ではありません。

したがって、こう言うことはできません

「ガイドラインによれば、亡くなったことによる汚損の費用は◯◯の負担」とは書けません。ガイドラインがその場面を想定していないからです。

この記事で使えるのは、床・壁・設備という部位ごとの考え方と、経過年数と施工単位という計算の型までです。請求書の中に、クロスの張替えや床材の交換の行があれば、そこは検算できます。

汚損そのものの負担者については、当サイトの調査では公的な判断を確認できていません。連帯保証人になっている方へにも同じ限界を書いています。請求を受けている場合は、契約書と請求書を持って弁護士または司法書士にご相談ください。

よくあるご質問

入居して8年です。クロス全面の張替えを請求されました

ガイドラインは、クロスについて6年で残存価値1円となるような直線を想定して負担割合を算定するとしています。8年であれば、価値としては1円まで下がっている計算になります。ただしガイドラインに法的拘束力はなく、契約に有効な特約がある場合や、故意・過失による毀損がある場合は結論が変わります。まず内訳と、いつ張り替えたクロスなのかを確認してください。1

傷は壁1面だけなのに、4面分を請求されています

ガイドラインは、原状回復は毀損部分に限定し、補修工事が最低限可能な施工単位を基本とすると示しています。そのうえで、模様あわせ・色あわせについては賃借人の負担とはしない、としています。工事として4面を張り替えること自体は妨げられませんが、その費用全部を負担するという結論には直結しません。1

契約書に「退去時はクロス全面張替え」と書いてあります

いわゆる特約です。ガイドラインは、契約条件を契約前に開示し、双方の十分な認識のもとで合意されたものでなければならないとしています。特約が常に無効というわけでも、常に有効というわけでもありません。契約時の説明の経緯を含めて、専門家にご確認ください。1

ハウスクリーニング代は借主負担が普通ではないのですか

ガイドラインは、次の入居者確保のために行うクリーニングは賃貸人負担とすることが妥当としています。ただし特約の有無で扱いが変わります。請求されている場合は、契約書の記載と、その説明を受けたかどうかを確認してください。1

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出典

  1. 国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)平成23年8月」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf(2026-08-11取得)
  2. e-Gov法令検索(デジタル庁)「民法(明治29年法律第89号)第885条・第896条・第904条の3・第909条の2・第921条・第939条・第940条・第621条・第653条・第654条・第656条・第465条の2・第465条の4・第7条・第11条・第15条」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026-08-13取得)

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