入居して2か月で亡くなりました。前払金はどのくらい戻りますか
金額は施設ごとの前払金の額と家賃等の月額で決まるので、当サイトでは計算できません。ただ、計算の形は決まっています。入居後3か月以内に亡くなった場合、省令が定める控除の方法は「家賃等の月額を30で除した額に、入居の日から起算して終了した日までの日数を乗ずる」ものです。重要事項説明書の(前払金の受領)欄にある「入居後3月以内の契約終了」の行と、この式を見比べてください。2,6
コラム/費用と見積
親御さんが有料老人ホームで亡くなり、施設から前払金の精算書を受け取った。入居してまだ日が浅いのに、戻る金額が思っていたより少ない。金額の根拠をどこで確かめればよいのかが分からない。そういう段階の方に向けたページです。
施設ごとの金額は、当サイトでは分かりません。ただ、前払金を返す契約を結ぶことは法律の義務で、差し引ける額の計算方法までが省令に書かれています。受け取った書類のどこを見れば確かめられるか、条文から順に並べます。

先に、いちばん大事な一文を置きます。老人福祉法29条10項です。長いので、途中で切らずにそのまま引きます。
有料老人ホームの設置者は、前項に規定する前払金を受領する場合においては、当該有料老人ホームに入居した日から厚生労働省令で定める一定の期間を経過する日までの間に、当該入居及び介護等の供与につき契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合に当該前払金の額から厚生労働省令で定める方法により算定される額を控除した額に相当する額を返還する旨の契約を締結しなければならない。
老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条第10項1
読みどころは2つあります。ひとつは「入居者の死亡により終了した場合」が、解除と並べて条文に書かれていること。もうひとつは、期間も控除額の計算方法も「厚生労働省令で定める」と、省令に投げられていることです。返す・返さないは施設の裁量ではなく、返す契約を結ぶこと自体が義務づけられています。
同じ29条の8項が禁じているのは、家賃・敷金・介護等の対価として受け取る費用を除いた、権利金その他の金品の受領です1。9項は、前払金を一括で受け取る施設に、算定の基礎を書面で明示することと、返還債務に備えた保全措置を講じることを求めています1。
この規定が適用される方
29条10項は、平成23年法律第72号による改正で入りました。同法の附則は施行日を平成24年4月1日と定め、あわせて「老人福祉法第二十九条第十項の規定は、同条第一項に規定する有料老人ホームに施行日以後に入居した者に係る前払金について適用する」としています1。
2012年4月1日より前に入居された方の前払金は、この条文の適用対象から外れます。その場合の返還は、当時結んだ契約の定めしだいです。契約書をお手元に置いてから、施設または下の相談先にお尋ねください。
29条10項が省令に投げた2つ──期間と計算方法──を受けているのが、老人福祉法施行規則21条です。条文は場合を2つに分けています。
| どの場合か | 期間(21条1項) | 控除される額の計算方法(21条2項) |
|---|---|---|
| 入居後、3か月が経過するまでに契約が解除され、または入居者の死亡により終了した場合 | 三月2 | 家賃その他20条の9に規定する費用の月額を30で除した額に、入居の日から起算して終了した日までの日数を乗ずる方法2 |
| 入居後、一時金の算定の基礎として想定した入居期間が経過するまでに終了した場合(上の場合を除く) | 当該期間2 | 終了した日以降の期間につき日割計算により算出した家賃等の金額を、一時金の額から控除する方法2 |
老人福祉法施行規則(昭和38年厚生省令第28号)第21条より2。表内の太字は当サイトによるものです。
上の段は、計算がひと通りに決まります。仮に、家賃等の月額が30万円の施設に45日入居して亡くなった場合であれば、控除されるのは 30万円 ÷ 30 × 45 = 45万円。前払金からこの額を引いた残りを返す契約を結ぶ、というのが法の求めていることになります。この30万円と45日は、計算の形をお見せするための仮の数字です。実際の月額はご自身の重要事項説明書に書かれています。
「家賃等」に何が入るかも、省令が決めています
下の段(3か月を超えて、想定した入居期間の中で亡くなった場合)は、条文が「一時金の額から控除する方法」という書き方をしていて、実際の金額は契約でどう想定居住期間を置いたか、初期償却額をいくらにしたかで変わります。当サイトでは、この段の金額まで一般化できません。次の章で、契約書のどこを見れば分かるかを書きます。
施設のパンフレットや契約書に「90日ルール」という言葉が出てくることがあります。この呼び名の出どころは、消費者委員会が2010年12月17日に厚生労働大臣に対して行った建議です。そこでは「短期解約特例制度(以下「90日ルール」という。)」と定義されています3。
建議は、この制度がどこに書かれていたかも説明しています。平成18年3月31日に改正された「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」の「9(1)ウ(エ)」に、契約締結日から概ね90日以内の契約解除の場合は既受領の一時金の全額を返還すること、という規定が置かれていた──つまり法律でも省令でもなく、指導指針の一項目でした3。指導指針を出している通知の本文には、本通知は地方自治法245条の4第1項に規定する技術的な助言に該当する、と書かれています4。
建議は、実態調査の結果も載せています。前払金を受け取る方式の合計1,196施設のうち、重要事項説明書で90日ルールの適用に関する規定が確認できないものが370施設(30.9%)ありました3。ご遺族にとって直接効くのは、次の一点です。
90日ルールを適用している施設のうち、入居者が90日以内に死亡した場合の取扱いについて記載があった施設の約4割が、死亡した場合は同ルールを適用しないとしている
消費者委員会「有料老人ホームの前払金に係る契約の問題に関する建議」2010年12月17日3
建議は続けて、指導指針は解約と死亡で返還の基準を区別しておらず、そのような区別に合理性を見出すことは困難だとし、死亡による契約終了の場合にも適用することを明確にするよう求めました3。この建議のあと、平成23年の改正で老人福祉法29条10項が置かれ、条文に「入居者の死亡により終了した場合」と書かれることになります1。
現行の指針に「90日」は残っていません
ここからが実務です。有料老人ホームは、入居契約に関する重要な事項を説明するために、厚生労働省が示す別紙様式に基づいて重要事項説明書を作ることになっています4。様式は決まっているので、どの施設のものでも、見る場所は同じです。
開く場所は「6.利用料金」の中の(前払金の受領)という表です6。並んでいる項目を、上から順に見ていきます。
1返還金の算定方法
この欄は「入居後3月以内の契約終了」と「入居後3月を超えた契約終了」の2段に分かれています6。前の章の表の1行目に当たるのが、上の段です。ここに書かれた式を、月額を30で割って入居日数を掛ける式と見比べてください。
2想定居住期間(償却年月数)と、償却の開始日
償却の開始日は様式では「入居日」と印字されています6。契約日ではありません。想定居住期間が何か月と書かれているかは、3か月を超えた場合の計算に効きます。
3初期償却額と初期償却率
様式では「想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額(初期償却額)」という名前の欄です6。指針は、この額は具体的な根拠により算出された額とすること、と求めています4。
4算定根拠
指針が示す考え方は、終身にわたる契約なら「(1ヶ月分の家賃又はサービス費用)×(想定居住期間(月数))+(想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額)」です4。前払金の総額が、この形で説明できるかを見ます。
5前払金の保全先
連帯保証を行う銀行等/信託契約を行う信託会社等/保証保険を行う保険会社/全国有料老人ホーム協会/その他、の5つから選ぶ欄です6。施設の経営が行き詰まったときに前払金が守られるかは、ここで決まります。
様式は自治体ごとに版が分かれていて、名古屋市はVer1.3、愛知県はVer1.4を使うよう案内しています7,8。手元の書類が古い版でも、(前払金の受領)欄の構成は変わりません。
精算書には、前払金以外の行も並びます。指針が基準を示しているものを挙げます。
保全措置については、施行規則が「一時金に係る銀行の債務の保証その他の厚生労働大臣が定める措置」と定めています2。指針がその中身として挙げているのは、平成18年厚生労働省告示第266号です4。
施設の説明と省令の書きぶりが食い違って見えるとき、行き先は3つあります。
有料老人ホームの指導監督は、届出を受けた自治体の仕事です。愛知県のページによれば、指定都市(名古屋市)と中核市(豊橋市・岡崎市・一宮市・豊田市)以外に開設されたホームの届出先は、愛知県知事です8。名古屋市内のホームは市の介護保険課が担当し、市内の有料老人ホーム一覧も市が公表しています7。まず、どちらの窓口かを確かめてください。
契約の内容についての相談は、消費者ホットライン188から、お近くの消費生活センターにつながります11。建議のもとになった苦情も、全国の消費生活センターに寄せられたものでした3。
契約書の条項そのものを争う段階になったら、専門家です。費用が心配な場合、法テラスのサポートダイヤル(0570-078374)で無料法律相談や費用の立替えの案内を受けられます12。
自治体の側にも手段が用意されています。都道府県知事は、設置者が29条6項から11項までの規定に違反したと認めるとき、その他入居者の保護のため必要があると認めるときは、改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができます1。命令に違反した場合の罰則は、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です1。
金額は施設ごとの前払金の額と家賃等の月額で決まるので、当サイトでは計算できません。ただ、計算の形は決まっています。入居後3か月以内に亡くなった場合、省令が定める控除の方法は「家賃等の月額を30で除した額に、入居の日から起算して終了した日までの日数を乗ずる」ものです。重要事項説明書の(前払金の受領)欄にある「入居後3月以内の契約終了」の行と、この式を見比べてください。2,6
老人福祉法29条10項が締結を義務づけているのは、前払金の額から省令の方法で算定される額を控除した額を返還する契約です。それ以外の控除の定めが個別の契約で有効かどうかは、当サイトでは判断できません。精算書の内訳と契約書を持って、届出を受けている自治体の窓口か、消費者ホットライン188からつながる消費生活センターにご相談ください。1,11
法令が定めているのは「三月」です。月によって期間を定めたときは暦に従って計算されるため、3か月の長さはまたぐ月の日数によって変わります。契約書の90日という定めが具体的な場面でどう適用されるかは契約の解釈になり、当サイトでは判断できません。なお指針は、予告期間などを設けて省令の期間を事実上短縮し、入居者の利益を不当に害してはならないとしています。2,5,4
老人福祉法29条10項は、平成23年の改正法の附則により、施行日である平成24年4月1日以後に入居した方の前払金について適用されます。それ以前に入居された場合は、当時結んだ契約の定めによることになります。契約書と重要事項説明書をそろえたうえで、施設または届出を受けている自治体の窓口にお尋ねください。1
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