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はじめての方へ/基礎知識
特殊清掃とは法律上の定義が無い、
ということから始めます。
「特殊清掃とは、通常の清掃では落とせない汚れを専門の技術で除去することです」——この説明は、どのサイトにも書かれています。ただ、これを読んでも会社を選べません。
ここでは、公的な文書のなかで「特殊清掃」がどう扱われているかから始めます。制度の側にほとんど何も無いことが、そのまま会社選びの注意点になるためです。
行政文書にある定義は、ひとつだけです
「特殊清掃」という言葉に、法律上の定義はありません。当サイトが公的文書を確認した範囲で、定義らしい記述が置かれているのは総務省行政評価局の調査報告書(令和2年3月)の一箇所だけでした。しかもそれは、本文ではなく表の注記です。
※ 自殺や孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス
総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」表4の注1
この報告書は特殊清掃を調べたものではありません。遺品整理サービスの実態調査であり、「特殊清掃」という語は40ページ中に2回しか出てきません。上の一文は、遺品整理業者が提供するオプションサービスの例として添えられた注です。
そしてこの注が、のちに国土交通省のガイドラインに引用されます。
孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス(「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(令和2年3月 総務省行政評価局))
国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」脚注112
引用の際に、言葉がひとつ落ちています
お気づきかもしれません。総務省の原文は「自殺や孤独死などが発生した住居において」ですが、国土交通省が引用した文からは「自殺や」が抜けています。当方で両方のPDFから本文を抽出して確認しました(2026年8月5日)。
どちらを引くかで意味の幅が変わるため、当サイトでは総務省の原文のほうを本来の定義として扱っています。
「特殊清掃業」という業種は、制度の上にありません
同じ総務省の報告書は、隣接する遺品整理サービスについて、次のように書いています。
また、遺品整理サービスに関して法令上定義しているものも見当たらない。もちろん、いわゆる「業法」のようなものもない。
総務省行政評価局・同報告書 第2 調査結果 11
日本標準産業分類にも「遺品整理サービス業」という分類は無い、とも書かれています1。
この記述の対象は遺品整理サービスであって、特殊清掃そのものについて同じ明言があるわけではありません。ただ、特殊清掃について定義を置いた法令も、免許も、届出の制度も、当サイトが確認した範囲では見当たりませんでした。
ここから、実務上ひとつの結論が出ます。
「特殊清掃をします」が指す範囲は、会社ごとに違います
業法が無いということは、名乗るための条件も、含めるべき作業の決まりも無いということです。ある会社の「特殊清掃」には消臭までが入り、別の会社では床材の撤去まで入り、また別の会社では遺品の搬出も含みます。
会社を比べるとき、「特殊清掃をやっているか」を比べても意味がありません。比べられるのは、見積書に並んだ項目のほうです。
一般の清掃との違いは、汚れの種類ではありません
多くの記事は「通常の清掃では落とせない汚れを扱うのが特殊清掃です」と説明します。間違いではありませんが、会社を選ぶときの役には立ちません。汚れの程度は、依頼する側からは測れないからです。
確かめられる違いは、許可のほうにあります。同じ総務省の報告書は、遺品整理の事業者について次のように書いています。
市町村による一般廃棄物収集運搬業の許可が必要となる(このことは、前述のとおり、事業者のサービス提供エリアにも影響する。)
総務省行政評価局・同報告書1
家財を運び出して処分するには、その市町村の許可が要ります3。許可は市町村ごとなので、名古屋市で運べる会社が一宮市でも運べるとは限りません。「対応エリア」と書かれていても、清掃には行けるが家財は運べない、ということが起こります。
買取まで頼む場合は、さらに古物商の許可が関わります。こちらは都道府県の公安委員会ごとの許可です1,4。
掃除の技術は外から測れません。許可は調べられます。当サイトが許可を配点の最上位に置いているのは、この違いによります。
どこまでが特殊清掃で、どこからが別の工事か
亡くなった後のお部屋で行われる作業は、おおよそ4つの層に分かれます。会社によって、どこまでを「特殊清掃」と呼ぶかが変わります。
- 一 消毒・消臭
薬剤の散布やオゾンなどによる処理。ほぼすべての会社が「特殊清掃」に含めます。
- 二 汚損した部分の撤去
畳・床材・壁材を剥がす作業。ここから含める会社と、別料金にする会社に分かれます。
- 三 遺品の仕分けと搬出
遺品整理と呼ばれる工程です。特殊清掃とは別の見積になることが多い部分です。
- 四 原状回復・リフォーム
剥がした後を戻す工事。別の会社になることもあります。
お見積りを受け取ったら、四つのうちどこまでが入っているかを確かめてください。三と四が入っていないまま「これで終わり」と思っていると、後から別の見積が出てきます。「一式」の見積書についてもあわせてご覧ください。
特殊清掃をしたこと自体が、後の取引で記録に残ります
これは、依頼を決める前に知っておいていただきたい点です。
国土交通省のガイドラインは、自然死や日常生活の中での不慮の死であっても、長期間人知れず放置されたことに伴って特殊清掃等が行われた場合は、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものとして扱う、としています2。つまり、特殊清掃を行ったという事実そのものが、後の売却や賃貸で説明の対象になり得ます。
これは特殊清掃を避ける理由にはなりません。放置すれば損害はさらに広がります。ただ、後で不動産をどうするかまで含めて考える材料にはなります。
お名前や、亡くなった状況までが伝わるわけではありません
賃貸のオーナー・管理会社の方は、期間の考え方を賃貸で入居者が亡くなったらにまとめています。
よくあるご質問
特殊清掃をするのに、資格は要りますか
特殊清掃を行うために法律上必要な資格は、ありません。会社が掲げている「事件現場特殊清掃士」「遺品整理士」は、いずれも民間の団体が養成講座を通じて認定しているものです。ただし、家財を運ぶには市町村の許可が必要で、こちらは有無で適法か違法かが変わります。3
ハウスクリーニングの会社に頼むことはできませんか
汚れの程度によります。ただ、家財の運び出しを伴う場合は、その会社が一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているか、許可業者に委託する旨を明示しているかを確かめてください。清掃だけを頼み、家財の処分はご自身で市の制度を使う、という分け方もできます。3,5
見積書に「特殊清掃一式」とだけ書かれていました
「特殊清掃」の範囲は会社ごとに違うため、一式では何が含まれているかを確かめられません。消臭・汚損部の撤去・遺品の搬出・廃棄物の処分のうち、どこまでが含まれるかを項目別に出してもらってください。
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出典
- 総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書(令和2年3月)」https://www.soumu.go.jp/main_content/000675388.pdf(2026-08-05取得)
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(令和3年10月)」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00061.html(2026-08-04取得)
- 法務省 日本法令外国語訳データベースシステム「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第2条・第7条)」https://www.japaneselawtranslation.go.jp/ja/laws/view/4529(2026-08-04取得)
- 愛知県警察「古物営業法の解説」https://www.pref.aichi.jp/police/shinsei/sonota/kobutsu/kobutukaisetu.html(2026-08-04取得)
- 名古屋市「引越しや片付け、遺品整理などで一度に大量に出るごみ(一時多量ごみ)の処理」https://www.city.nagoya.jp/kurashi/gomi/1012410/1012415.html(2026-08-04取得)
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