「孤独死は年間6万8千人」という数字を見ました
出どころをたどると、警察庁が公表している「自宅で死亡した一人暮らしの者」の統計であることが多いようです。これは発見が早かった人も含む数字で、孤独死の件数ではありません。最新は令和7年で76,941体です。2
コラム/統計の読み方
「孤独死は年間◯万人」という数字を、いくつものサイトで見かけます。ところが値がまちまちです。2万人と書いてあるところもあれば、7万人と書いてあるところもあります。
間違いが多いのではなく、数えているものが違います。当サイトも統計を引用している以上、その中身を開いておきます。

ここから始めないと、どの数字も読めません。内閣官房のワーキンググループの資料に、こう書かれています。
「孤独死・孤立死」という用語については、これまで明確な定義がなく使用されたり、定義がなされたとしても、行政機関・自治体ごと、あるいは研究者ごとに様々な定義が用いられるなど、統一的な定義がない状態にある。
内閣官房「孤独死・孤立死」の実態把握に関するワーキンググループ資料1
定義が決まっていないのですから、「正しい1つの数字」は存在しません。あるのは「何をどう数えたか」が違う複数の数字です。
| 出どころ | 数えているもの | 直近の値 |
|---|---|---|
| 警察庁 | 警察が取り扱った死体のうち、自宅で死亡した一人暮らしの者 | 令和7年 76,941体2 |
| 内閣府 | 上の統計をもとに、死後8日以上経って発見されたと推計される人(孤立死) | 令和7年 22,222人3 |
| 日本少額短期保険協会 | 孤独死保険に加入していた賃貸住宅の入居者で、居室内で死亡し死後に判明した人 | 2015年4月〜2025年3月の累積 12,105人4 |
3つとも「孤独死の人数」ではありません。それぞれ別のものを数えています。
内閣府の推計を引くときに、必ず添えるべき一文があります。
今回の推計に用いた孤立死の考え方や目安となる死後経過日数等については、日本における孤立死の概数を統計的に把握するという限られた目的のための考え方・目安を示したものであり、「特定の死後経過日数等をもって『孤立死』と定義した」というものではないことに留意が必要である。
内閣府孤独・孤立対策推進室1
なぜ「8日」なのかにも説明があります。発見前の7日間、連絡が取れないことを気にかける他者との接触機会がなかったと推察される、という考え方です1。参考指標として「死後4日以上」(腐敗が明白に発現し始める時期)も併記されており、こちらは32,678人です3。
数字を引くときは、必ず但し書きごと引く
「内閣府によると孤立死は年間2万2千人」とだけ書くと、政府が定義したかのように読めます。原典はそれを否定しています。
当サイトが統計を出すときに毎回「何の数字か」を添えているのは、この理由によります。
ご自身の地域の数字を知りたい方が多いと思いますが、正直に書きます。
愛知県・名古屋市について、孤独死の件数を示した公的な統計は、当サイトの調査では確認できませんでした。警察庁の統計に都道府県別の集計はありますが、それは「自宅で死亡した一人暮らしの者」であって孤独死の件数ではありません。
東京都には監察医務院による単身世帯の自宅死亡統計がありますが、同等の統計は愛知県にはありません。地域差を語れるだけのデータが揃っていないのが実情です。
代わりに確かめられるのは、名古屋市の高齢化の状況です。65歳以上人口は574,630人、高齢化率は25.0%(令和6年10月1日現在)で、区別では最も高い南区が29.8%、最も低い中区が17.8%です5。区による差はこちらで見られます。
この記事で申し上げたいのは、ひとつだけです。
数字は、ご自身の状況を測るものではありません。
「年間◯万人」という数字を見ても、いま目の前にあるお部屋のことは何も分かりません。それでも当サイトが統計を載せているのは、別の理由からです。
発見までの経過日数は「0〜1日」が28,398体(約37%)で最も多い
警察庁 令和7年2
発見が遅れたことを、ご自身の責任だと感じている方に読んでいただきたいからです。数字は、それが特別なことではないと示しています。それ以上の使い道は、この統計にはありません。
出どころをたどると、警察庁が公表している「自宅で死亡した一人暮らしの者」の統計であることが多いようです。これは発見が早かった人も含む数字で、孤独死の件数ではありません。最新は令和7年で76,941体です。2
目的によります。一人暮らしの自宅死亡の全体を知りたいなら警察庁、発見が遅れた場合の規模を知りたいなら内閣府の推計、賃貸住宅での費用の目安を知りたいなら少額短期保険協会のレポートです。どれも「孤独死の人数」そのものではありません。2,3,4
月別・季節別の発見件数を公表している公的統計は、当サイトの調査では確認できませんでした。警察庁の公表統計は年齢階層別・経過日数別・都道府県別のみで、月別集計は存在しません。「一般に気温が高いと死後の変化が早く進む」という法医学の一般論までは言えますが、統計的な裏づけはありません。2,6
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