はじめての特殊清掃亡くなった後の部屋を、最初に任せる一社を。

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コラム/貸主・管理会社の方へ

明渡しが進まない方へ申立てはできます。
ただし費用がかかります。

入居者が亡くなり、相続人が見つからない。あるいは全員が相続放棄をした。部屋は残置物が入ったまま、賃貸借契約も終わらない——という状態の方に向けたページです。

制度としては、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらう道があります。ただし費用が先に出ていきます。そこを含めて書きます。

なぜ、貸主の側で処分できないのか

法務省は、モデル契約条項を策定した背景をこう説明しています。

賃借人の死亡後,賃借権と居室内に残された家財(以下「残置物」という。)の所有権は,その相続人に承継(相続)されるため,相続人の有無や所在が分からない場合,賃貸借契約の解除や残置物の処理が困難になることがあり…

法務省民事局「残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定について」1

賃借権も残置物も相続人のものです。所有者が分からないまま処分すると、後から相続人が現れた場合に責任を問われます。だから止まります。

入居時に残置物の処理等に関するモデル契約条項にもとづく契約を結んであれば、そちらが使えます。期日の整理は次の募集までの時間表に書きました。結んでいない物件では、以下の話になります。

相続財産清算人の制度

裁判所は、制度の対象をこう説明しています。

相続人の存在,不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる。)には,家庭裁判所は,申立てにより,相続財産の清算人を選任します。

裁判所「相続財産清算人の選任」2

申立てができるのは利害関係人と検察官です2,3。賃貸物件の貸主は、賃料債権を持つ利害関係人にあたると考えられます。申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。

民法は、選任の公告について「その期間は、六箇月を下ることができない」と定めています3。令和3年の改正で、権利の確定に最低限必要な期間は10か月から6か月に短縮されました。

名古屋家庭裁判所の予納金は70万円程度

愛知県内の申立ては名古屋家庭裁判所になります。同裁判所の手引には、はっきり書かれています。

⑷ 予納金 相続財産清算費用や清算人報酬等の費用の見込額として70万円程度

※ 金額は、裁判所において事案に応じて決定されます(事案により70万円を超える場合もあります。)。

※ 申立て後に納付していただきますので、申立て時には必要ありません。

名古屋家庭裁判所「相続財産清算人選任申立ての手引」4

このほか、収入印紙800円と郵便切手が必要です4

予納金は、戻ってこないことがあります

同じ手引には、次の記載があります。

この予納金は、被相続人の相続財産中に、清算人の清算費用等(報酬を含む)を支弁するに足る確実な財産(現金や預貯金)が存在し、相続財産が形成された場合…には、後に返還されることとなりますが、相続財産が形成されない場合は、全額または一部が返還されない場合がありますので、申立人は、自己の権利実現の効果と費用とを対比して、申立てをするか否かを慎重に検討してください。

同手引4

亡くなった方に財産がほとんど無い場合、70万円は戻りません。回収したい家賃と残置物の処分費用の合計が70万円に届かないなら、申立て自体が割に合わない可能性があります。

手引はさらに、明渡しが困難な場合について注意しています。

※ 土地の明渡しが困難な場合等(…残置動産の処分費用が捻出できない場合等)には、選任審判が取り消される場合がありますので、申立前に、同費用負担について十分検討した上で申立てをしてください。

同手引4

残置物の処分費用の見通しを、申立ての前に立てておく必要がある、ということです。先に見積を取っておく理由がここにあります。

どのくらい時間がかかるか

公表資料から確実に言えるのは、次の2点までです。

  • 選任の審判まで、名古屋家裁の目安で約1か月4
  • 選任後の相続人捜索の公告は6か月以上(民法952条2項)3

手続きの開始から完了までの総期間を示した公的資料は、当サイトの調査では確認できませんでした。「◯か月で終わります」とは書けません。

なお名古屋家裁は、清算人について「原則として、事件につき利害関係のない愛知県弁護士会等に所属する弁護士を選任しています(申立人の推薦があった場合も同様です。)」としています4。申立人が選ぶことはできません。

申立ての前に確かめる4つ

1本当に相続人がいないのか

「連絡がつかない」と「相続人がいない」は違います。戸籍をたどれば見つかることがあります。申立てには戸籍謄本等の収集が必要になるので、その過程で判明する場合もあります。

2回収したい金額と、70万円を比べる

滞納家賃、残置物の処分費用、原状回復費用、空室期間の損失。合計が予納金を下回るなら、別の道を検討する価値があります。

3残置物の処分費用の見積を取っておく

手引が「同費用負担について十分検討した上で申立てを」と求めています4。項目別の見積があれば、裁判所とのやり取りでも使えます。

4保険を確認する

大家型の孤独死保険に入っていれば、遺品整理(残置物処理)費用・原状回復費用・家賃損失が補償の対象になっている場合があります5。保険証券を先に確認してください。

手引は、戸籍謄本等の収集や競売、明渡し、費用対効果の検討について「法律知識が必要な場合もあります」として、弁護士・司法書士への相談に触れています4

よくあるご質問

相続放棄をした人に、部屋を片付けてもらえませんか

民法は、相続放棄をした者がその放棄の時に相続財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産の清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存しなければならないと定めています。ただしこれは保存義務であって、片付けや処分を求められる根拠とは限りません。個別の判断は弁護士にご確認ください。3

予納金を安くする方法はありますか

金額は裁判所が事案に応じて決めるとされており、申立人が決められるものではありません。相続財産に現金や預貯金があれば清算費用がそこから支弁され、結果として返還されることがあります。4

申立てをせずに済ませる方法はありますか

入居時に残置物の処理等に関するモデル契約条項にもとづく契約を結んであれば、そちらで進められる場合があります。今後の物件については導入を検討する価値があります。既存の契約については、宅地建物取引業者・弁護士にご相談ください。6

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出典

  1. 法務省民事局「残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定について〜円滑に賃貸住宅の残置物を処理する方法をお示しします〜(令和3年6月7日)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00262.html(2026-08-05取得)
  2. 裁判所「相続財産清算人の選任」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html(2026-08-05取得)
  3. e-Gov法令検索(デジタル庁)「民法(明治29年法律第89号)第885条・第896条・第904条の3・第909条の2・第921条・第939条・第940条・第621条・第653条・第654条・第656条・第465条の2・第465条の4・第7条・第11条・第15条」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026-08-13取得)
  4. 名古屋家庭裁判所「相続財産清算人選任申立ての手引【相続財産 R050401版】」https://www.courts.go.jp/nagoya-f/vc-files/nagoya-f/04kajibu/05/souzoku/souzokuzaisanseisanninsenninmousitatenot....pdf(2026-08-05取得)
  5. 一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第10回 孤独死現状レポート(2025年12月発行)」https://www.shougakutanki.jp/general/info/kodokushi/news/kodokusiReport_10th.pdf(2026-08-04取得)
  6. 国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項(本文・解説コメント)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001726434.pdf(2026-08-05取得)

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