管理費の滞納が続いています。組合は何ができますか
滞納管理費は区分所有権とともに相続人に承継されます。まず相続人を把握することが先で、そのための届出の根拠が標準管理規約第31条です。回収の手続きについては、区分所有法にもとづく手段を含めて弁護士にご相談ください。1
コラム/貸主・管理会社の方へ
区分所有者の方が亡くなった。管理費が止まっている。連絡がつかない。住戸から臭いがしていると他の居住者から言われている——そういう場面で、理事会が何をできるのかという話です。
結論から書くと、組合が単独でできることは多くありません。ただ、規約に定めがある部分ははっきりしています。そこから始めます。

まず線を引きます。亡くなった方の住戸は専有部分であり、その所有権は相続人に承継されます。組合が管理するのは共用部分です。
標準管理規約のコメントは、用語をこう整理しています。
包括承継は相続、特定承継は売買及び交換等の場合をいう。賃借人は、占有者に当たる。
マンション標準管理規約(単棟型)第5条関係コメント1
つまり相続人が新しい区分所有者になります。組合ができるのは、その相続人を把握し、連絡を取り、規約に沿って求めることまでです。
これは「標準」であって、法律上の義務ではありません
以下で引くのは国土交通省が示している標準管理規約です。実際に効力を持つのは、そのマンションが定めている管理規約です。
まずご自身のマンションの規約を確認してください。標準管理規約をベースにしている組合が多いため参考にはなりますが、条番号も内容も違うことがあります。
実務でいちばん困るのが、相続人が決まらない期間です。ここについても、標準管理規約のコメントは続けてこう書いています。
なお、遺産分割協議に時間を要する場合などやむを得ない事情により直ちに届出を提出することができない場合には、管理組合の事務の円滑化の観点から、届出が行われるまでの当面の連絡先として、包括承継人の代表者等の連絡先を把握しておくことも考えられる。
同 第31条関係コメント②1
これは実務上とても使えます。「相続が決まるまで何もできません」と言われたときに、「では決まるまでの連絡先だけ教えてください」と返せる根拠になります。国が示している標準規約のコメントに書かれている、という言い方ができます。
届出書の様式もコメントに示されており、記載欄には氏名・現に居住する住所・電話番号のほか緊急連絡先があります1。
そもそも、こういう事態に備える定めも規約にあります。
理事長は、組合員名簿及び居住者名簿(以下「組合員名簿等」という。)を作成して保管し…
理事長は、毎年1回以上、組合員名簿等の内容の確認をしなければならない。
同 第31条の2第1項・第4項1
単身の高齢の方が増えている以上、緊急連絡先が空欄のまま何年も経っている名簿は、そのままリスクになります。総会や理事会の議題として、名簿の更新を年1回の定例にしておくのが現実的です。
他の居住者から相談が来た場合、組合が窓口になります。名古屋市は、集合住宅の中での悪臭について次のように案内しています。
マンション等、同じ建屋内の騒音や悪臭等に関しては、管理組合や管理会社等にご相談ください。
名古屋市環境局「工場・事業場からの公害に関することは」2
各区の公害対策課が受け付けるのは工場・事業場からの公害で、同じ建物の中の臭気はこの枠に入りません2。行政に振っても、組合に戻ってきます。
一方、堆積物が原因の場合は別の枠があります。名古屋市には住居の堆積物に関する条例があり、専用の窓口(環境局事業部作業課 052-972-2288)が置かれています3。条例上の「建物等」は戸建てか集合住宅かを区別していません4。詳しくは住まいに物が積み上がってしまったときをご覧ください。
相談してきた居住者の方には、近隣にお住まいの方へをそのままお渡しいただいて構いません。
専有部分の清掃を発注できるのは相続人です。組合や管理会社が立て替えて発注する場合は、誰の依頼で、誰が支払い、後でどう精算するのかを先に文書にしてください。口頭のままだと、後から相続人との間で争点になります。
会社を選ぶときに確かめることは、賃貸の場合と同じです。
滞納管理費は区分所有権とともに相続人に承継されます。まず相続人を把握することが先で、そのための届出の根拠が標準管理規約第31条です。回収の手続きについては、区分所有法にもとづく手段を含めて弁護士にご相談ください。1
相続人の存在・不存在が明らかでないとき(相続人全員が相続放棄をした場合を含む)は、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。申立てができるのは利害関係人と検察官です。ただし名古屋家庭裁判所の手引には、清算費用や清算人報酬等の見込額として70万円程度を予納する旨が書かれています。費用対効果を先に検討してください。6,7
専有部分への立入りは、規約や区分所有法の定めによります。ご自身のマンションの規約を確認したうえで、緊急性がある場合の手続きを弁護士にご確認ください。当サイトでは判断できません。
会社の許可・料金・サービス内容は変わります。当サイトは取得日を添えて記録していますが、依頼の前にご自身でも最新の内容をご確認ください。