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コラム/相続と手続き

実家を解体することにした方へ届け出る義務は、
頼んだ側にあります。

片付けが終わり、建物をどうするかを決める段になりました。解体を選ぶ場合に、知らないまま義務を負っている条文があります。

実務では業者が代わりに手続きをしてくれることがほとんどです。ただし法律が名指ししているのは、発注した側です。代行されているかどうかは、確かめておいてください。

分かれ目は「80平方メートル」です

建設リサイクル法は、一定の規模以上の工事を「対象建設工事」と呼び、分別解体と再資源化を義務づけています。その規模は政令で決まっています。

一 建築物…に係る解体工事については、当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が八十平方メートルであるもの

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行令 第2条第1項第1号1

80㎡はおよそ24坪です。一般的な戸建てのほとんどが、これを超えます。ご実家を解体する場合、まず対象になると考えてください。

契約を分けても、合算されます

同じ人が2つ以上の契約に分けて請け負わせた場合は、1つの契約で請け負ったものとみなして基準が当てはめられます1。ただし正当な理由に基づいて分割したときは、この限りではないとされています1

「母屋と離れを別契約にすれば80㎡を切る」という考え方は、条文の側で塞がれています。

届け出るのは、業者ではなく発注者です

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

対象建設工事の発注者又は自主施工者は、工事に着手する日の七日前までに、主務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第10条第1項2

届け出る内容は、解体する建物の構造、工事着手の時期と工程の概要、分別解体等の計画、建設資材の量の見込みなどです2

一方、実際に分別して解体する義務は受注者の側にあります。

…対象建設工事の受注者…又はこれを請負契約によらないで自ら施工する者…は、正当な理由がある場合を除き、分別解体等をしなければならない

同法 第9条第1項2

手を動かすのは業者、届け出るのは依頼した側という分かれ方になっています。ほとんどの解体業者は委任を受けて代行してくれますが、法律上の名宛人が変わるわけではありません。

1「届出は代行していただけますか」と聞く

代行してもらう場合は委任状を書くことになります。書いた覚えがないまま工事が始まっていたら、届出が出ていない可能性があります。

2控えをもらう

届出をした証跡は残ります。近隣とのやり取りや、あとで書類が必要になったときのために、控えを受け取っておいてください。

3着手の7日前という時間を見込む

都道府県知事は、届出の計画が基準に適合しないと認めるときは、受理した日から7日以内に限り、計画の変更その他必要な措置を命ずることができます2。日程はここを織り込んで組んでください。

契約書に「解体工事に要する費用」を書く義務があります

見積の話にも条文があります。

対象建設工事の請負契約…の当事者は、建設業法…第十九条第一項に定めるもののほか、分別解体等の方法、解体工事に要する費用その他の主務省令で定める事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない

同法 第13条第1項2

つまり「解体一式◯◯円」で済ませてはいけない契約だということです。分別解体をどうやるのか、その費用がいくらなのかは、書面に書かれているはずのものです。

変更するときも、変更の内容を書面に記載して相互に交付することが求められています2作業中に金額が動いたら、口頭で終わらせず書面をもらってください。

見積書の読み方そのものは「一式」の見積書に書いています。考え方は同じです。

解体の前に、済ませておくことがあります

1相続登記

建物の名義が亡くなった方のままだと、話が進みにくくなります。しかも相続登記には期限があります。2024年4月1日より前に相続を知っていた場合は2027年3月31日までです。相続登記の義務化にまとめました。

2中の物を出しておく

家財が残ったまま解体すると、建物の廃材と家財が混ざります。家財は一般廃棄物、解体で出る廃材は産業廃棄物で、必要な許可が違います。片付けを先に済ませるほうが、経路がはっきりします。

3建物の名義を消す手続き

解体したら、建物の登記を閉じる手続き(滅失登記)が必要になります。当サイトではこの手続きの詳細を確認していません。土地家屋調査士または法務局にご確認ください。

アスベストについて

解体の前には石綿(アスベスト)の調査が関わってきます。ただしこれは建設リサイクル法ではなく、大気汚染防止法や石綿障害予防規則の領域です。

当サイトはこの分野の条文を確認していないため、内容を書きません。解体業者に「石綿の事前調査はどうなりますか」と尋ねて、その結果の報告を受け取ってください。

解体以外の選択肢もあります

解体すると建物が無くなるので、土地の固定資産税の扱いが変わります。住宅が建っている土地には課税標準を減額する住宅用地特例があり、200㎡以下の部分は6分の1、超える部分は3分の1です3

ただし、置いておけば安いままとも限りません。空家等対策特別措置法は令和5年に改正され「管理不全空家等」という区分が新設されました。市町村長から勧告を受けた敷地は、この特例の対象から外れます4,3

制度の詳しい説明は実家の片付けに書いています。愛知県は2026年4月に「あいち空き家活用さかさま相談室」を開設していて、無料で相談できます(平日10時〜16時)5

当サイトは、解体すべきかどうかを判断しません

売る・貸す・解体するのどれがよいかは、土地の条件、ご家族の意向、資金繰りで変わります。当サイトにはその判断材料がありません。

ここに書いたのは、解体を選んだ場合に法律上どういう義務がかかるか、という一点だけです。

よくあるご質問

解体業者が全部やってくれると言っています。それでいいですか

実務としては一般的です。ただし届出の義務を負うのは発注者、つまり依頼した側だと法律が定めています。代行してもらう場合は委任状を交わすことになるので、書いた覚えがあるか、届出の控えを受け取っているかを確認してください。2

小さな物置だけを壊す場合も届出が要りますか

建築物の解体は、床面積の合計が80平方メートル以上のものが対象です。それ未満であれば建設リサイクル法の届出の対象にはなりません。ただし複数の契約に分けた場合は合算して判断されます。1

見積書が「解体工事一式」だけです

対象建設工事の請負契約では、分別解体等の方法と解体工事に要する費用を書面に記載して相互に交付することが法律で求められています。内訳を求めてください。応じない場合は、その理由を聞いたうえで他社にも見積を取ることをおすすめします。2

家財が残ったままでも解体できますか

物理的にはできますが、おすすめしません。家財は一般廃棄物、解体で出る廃材は産業廃棄物にあたり、必要な許可が違います。片付けを先に済ませたほうが、処分の経路がはっきりします。

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出典

  1. e-Gov法令検索(デジタル庁)「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行令(平成12年政令第495号)第2条(建設工事の規模に関する基準)」https://laws.e-gov.go.jp/law/412CO0000000495(2026-08-12取得)
  2. e-Gov法令検索(デジタル庁)「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号)第9条・第10条・第13条」https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000104(2026-08-12取得)
  3. 国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712029.pdf(2026-08-09取得)
  4. 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律 新旧対照条文(令和5年12月13日施行)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621963.pdf(2026-08-09取得)
  5. 愛知県建築局住宅計画課「あいち空き家活用さかさま相談室」https://www.pref.aichi.jp/soshiki/jutakukeikaku/matching-platform.html(2026-08-09取得)

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