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コラム/会社の選び方
見積の行を、順番で読む工程には、
動かせない順番があります。
特殊清掃の見積書には、作業の行が並んでいます。その並び順に意味があることは、あまり書かれていません。
においが戻った、虫がまた出た、というご相談をうかがうと、工程がひとつ抜けているか、順番が入れ替わっていることがあります。なぜその順番でなければならないのかを、国の資料から確かめます。
並びと、その理由
一 なぜ撤去が最初なのか
いちばん動かせないのが、ここです。理由は、国の資料に書かれている考え方と同じです。
厚生労働省が示しているIPM(総合的有害生物管理)では、防除の最初に来るのは駆除ではなく発生源対策です。環境の改善と侵入防止、定期的な清掃、床・壁・天井のすき間や亀裂の補修によって発生源をなくす、とされています4。
においも同じ構造です。亡くなってから時間が経った場合、体液の漏出や臭気が生じることが法医学の総説で指摘されています5。漏れたものが床材の継ぎ目や下地に届いていれば、そこが発生源です。
ここを飛ばした見積が、いちばん危ないです
「消臭一式」だけが並んでいて、撤去の行が無い見積があります。表面の作業と脱臭だけで終わらせる形です。
発生源が下地に残っていれば、脱臭で一度収まっても戻ります。そして戻ったときには、最初にやるべきだった撤去を、脱臭の費用を払ったあとに追加で払うことになります。
見積を受け取ったら、「汚染物の撤去はどこの行ですか」と聞いてください。無ければ、なぜ不要と判断したのかを聞いてください。
二・三 清掃と消毒は、別のことをしています
清掃は汚れを落とす作業、消毒は微生物を対象にする作業です。順番として清掃が先に来るのは、汚れの上から消毒剤をかけても、効かせたい面に届かないためです。
厚生労働省ほかが示している消毒の案内でも、消毒剤は対象と使い方が決まっているものとして説明されています1。広く撒けば効く、というものではありません。
そして、ここが混同されやすいところです。
消毒は、においを消す工程ではありません
消毒の対象は微生物です。においの原因物質を分解する工程ではありません。消毒をしたから、においが消えるわけではないということです。
見積で「消毒・消臭 一式」とまとめられている場合は、行を分けてもらってください。2つの作業の違いは消毒と消臭の記事にまとめました。
四 乾燥を飛ばすと、あとで虫が出ます
見積書にはほとんど書かれない工程ですが、順番としてはここに入ります。
床材を剥がして下地まで手を入れた場合、その面は濡れています。清掃と消毒で水を使えばなおさらです。乾き切る前に新しい床材で塞ぐと、内側に水分が残ります。
そこで出てくるのが、カビを食べる虫です。名古屋市の図鑑は、チャタテムシ類について「地衣類やカビなどを摂食している」と説明しています2。清掃が終わったあとに小さな虫が出はじめたら、湿気が残っている合図と読めます。
虫の種類から発生源を読む話は現場に出る虫の記事にまとめました。
聞くこと床を塞ぐ前に、乾燥の時間を取りますか。何日みていますか。
工期を短くしたい気持ちは分かりますが、ここを詰めると後で開け直すことになります。
五 脱臭は、最後のほうの工程です
環境省が公開している脱臭技術の手引きには、方式ごとの一覧があります3。当サイトでは脱臭方式の記事で、見積の「消臭」がどの方式を指しているかを見分ける形にまとめました。
どの方式であっても、発生源が残っていれば元に戻ります。脱臭は、発生源を取り切ったことを前提にした仕上げの工程です。
オゾンを使う方式では、稼働中そばにいられません。国が示している数字はオゾンの記事にまとめています。作業日程を組むときは、この入れない時間も日数に入ります。
「脱臭を先に1回やって様子を見る」を提案されたら
費用を抑える提案として出てくることがあります。判断はご自身ですが、下地まで達している場合、この順番では収まりません。
聞いていただきたいのは1つです。「戻った場合、脱臭の費用は次の見積に充当されますか」。書面の消臭保証があるかどうかはチェックリストの記事で確かめられます。
六 確認は、機械だけでは終わりません
作業が終わったかどうかを、何で判断するか。ここも順番の一部です。
においについて法律が使っている物差しは、機械の数値だけではありません。臭気指数は、人の嗅覚を使って測る方式です。誰が、どう測るのかはにおいを、誰が測るのかの記事にまとめました。
引き渡しのときに確かめることは、3つです。
解体・張替えは、清掃とは別の話になります
床材や下地の交換に入ると、そこからは工事です。金額しだいで建設業の許可の話も出てきます(建設業許可の記事)。
賃貸であれば、費用を貸主と借主でどう分けるかという話にもなります。国交省ガイドラインの負担区分は検算の記事にまとめました。
順番としては、脱臭と確認が済んでから張り替えるほうが安全です。塞いだあとに戻ると、もう一度開けることになります。
全部を一度に頼まなくても構いません
工程が分かれているということは、頼む単位も分けられるということです。「撤去と消毒までお願いして、脱臭は様子を見てから」という進め方も、「清掃だけ頼んで家財は自分で運ぶ」という進め方もできます。
見積のときに「この工程だけ頼めますか」と聞いてみてください。会社によって受ける範囲が違います。
この記事の要点
- 作業の順番は、汚染物の撤去、清掃、消毒、乾燥、脱臭、確認の順に進みます。
- 撤去が最初に来るのは、発生源が残っていれば後の工程がやり直しになるためです。
- 国の防除の考え方でも、最初に置かれているのは駆除ではなく発生源対策です。
- 消毒と脱臭は対象が違う作業です。消毒したから、においが消えるわけではありません。
- 乾燥を飛ばすと、カビを食べる虫が後から出ることがあります。
- 脱臭は発生源を取り切ったあとの工程で、方式によって部屋に入れない時間があります。
- 確認は機械だけでは終わりません。法律上のにおいの物差しは、人の鼻を使う方式です。
よくあるご質問
見積に工程が書かれておらず、「特殊清掃一式」だけです
その状態では、どの工程が含まれていてどれが含まれていないかを確かめられません。行を分けてもらってください。分けられない理由を説明されたら、その説明ごと記録に残しておくと、後で金額が動いたときの手がかりになります。6
順番を変えてもらうことはできますか
この記事に書いた順番は、後の工程が前の工程の結果に乗っている、という関係から来ています。入れ替えると、やり直しになる可能性が高くなります。日程の都合で入れ替えたい場合は、その理由と、戻った場合の扱いを先に確かめてください。
殺虫はどの工程に入りますか
虫が出ている場合、発生源の撤去と同じ段階の話になります。国の防除の考え方では、発生源対策が駆除より先に置かれています。殺虫剤だけを先に使っても、発生源が残っていれば繰り返します。4
工程がすべて終わったのに、においが残っています
発生源が取り切れていないか、乾燥が足りていない可能性があります。作業をした会社に、どの工程まで実施したかを確かめてください。書面の消臭保証がある場合は、その条件と期間も確認してください。3
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出典
- 厚生労働省・経済産業省・消費者庁「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(消毒用エタノール・次亜塩素酸ナトリウムの使い方と注意)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html(2026-08-18取得)
- 名古屋市 健康福祉局 衛生研究所(web昆虫図鑑)「チャタテムシ類(体長1-10mm程度。地衣類やカビなどを摂食。屋内で発生するものはコナチャタテ科に属するものが多い)」https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/eisei/1015269/1034848/1015298/1034489/1015338.html(2026-08-18取得)
- 環境省環境管理局大気生活環境室「防脱臭技術の適用に関する手引き(平成15年3月)脱臭技術一覧・脱臭効率一覧」https://www.env.go.jp/content/900397525.pdf(2026-08-11取得)
- 厚生労働省「建築物における維持管理マニュアル 第6章 ねずみ等の防除──IPM(総合的有害生物管理)の施工方法」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei09/pdf/03g.pdf(2026-08-13取得)
- 日本医科大学医学会「金涌佳雅「孤立(孤独)死とその実態」日本医科大学医学会雑誌 2018年14巻3号 100-112頁」https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/014030100.pdf(2026-08-04取得)
- 総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書(令和2年3月)」https://www.soumu.go.jp/main_content/000675388.pdf(2026-08-05取得)
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