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コラム/貸主・管理会社の方へ
貸主・売主・管理会社の方へ告知書に書くかどうかが、
分かれ目になります。
入居者が亡くなったあと、次の募集で「どこまで伝えるのか」。ここを宅地建物取引業者に任せきりにされる貸主の方が多いのですが、ガイドラインの作りを読むと、任せきりにはできません。
国土交通省のガイドラインは、宅建業者に自発的な調査の義務はないとしています。そのうえで、貸主・売主に書面で書いてもらうことをもって調査義務を果たしたものとしています。書かなかった場合に何が残るのか、原文で確かめます。
宅建業者は、貸主に書いてもらうことで義務を果たします
まずここです。多くの貸主の方が、宅建業者が調べてくれるものだと思っておられます。ガイドラインの書き方は違います。
人の死に関する事案が生じたことを疑わせる特段の事情がないのであれば、人の死に関する事案が発生したか否かを自発的に調査すべき義務までは宅地建物取引業法上は認められない。
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン 3.(1)1
では、宅建業者は何をすれば義務を果たしたことになるのか。
媒介を行う宅地建物取引業者においては、売主・貸主に対して、告知書(物件状況等報告書)その他の書面(以下「告知書等」という。)に過去に生じた事案についての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。
同 3.(1)1
そして、その次の一文が効きます。
この場合において、告知書等に記載されなかった事案の存在が後日に判明しても、当該宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、人の死に関する事案に関する調査は適正になされたものとする。
同 3.(1)1
書かなければ、判断は貸主の側に残ります
この3つを続けて読むと、構造が見えます。宅建業者は、告知書への記載を求めた時点で調査義務を果たします。そこに書かれなかった事案が後で問題になったとき、宅建業者は「適正に調査した」と扱われます。
つまり、告知書に書くかどうか、どう書くかは貸主・売主が自分で決める判断です。「業者が何も言わなかったから」は、後から効きません。
迷う場合は、宅建業者に相談したうえで書くほうが安全です。告げなくてよい場合に当たるかどうかの判断は、次の章のとおり、書いてある事実がないと始まりません。
あわせて、ガイドラインは宅建業者が周辺住民への聞き込みやインターネットの調査を行う義務は原則ないとし、行う場合も、正確性の確認が難しいことと、亡くなった方やご遺族の名誉および生活の平穏への配慮から、特に慎重な対応を要するとしています1。
告げなくてよいとされる3つの場合
ガイドラインは、告げなくてもよい場合を3つに分けています。賃貸と売買で扱いが違うところがあるので、表にします。
| 場合 | 賃貸借 | 売買 |
|---|---|---|
| ① 自然死・日常生活の中での不慮の死 | 原則、告げなくてよい | 原則、告げなくてよい |
| ② ①以外の死、または①の死で特殊清掃等が行われた場合で、発覚から概ね3年を経過した後 | 原則、告げなくてよい | この記載はありません |
| ③ 隣接住戸、または借主・買主が日常生活において通常使用しない共用部分での事案 | 原則、告げなくてよい | 原則、告げなくてよい |
国土交通省ガイドライン 4.(1)より1。①②③のいずれにも、事件性・周知性・社会に与えた影響等が特に高い事案は別、という留保が付いています。
①について、原文は理由をこう書いています。老衰や持病による病死などの自然死、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥といった日常生活の中で生じた不慮の事故による死は、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられる、というものです1。
①には、大きな例外が続きます
①の説明のすぐあとに、こう書かれています。
ただし、自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、取引の対象となる不動産において、過去に人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等(以下「特殊清掃等」という。)が行われた場合においては、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられる
同 4.(1)①1
自然死であっても、特殊清掃等が行われたのなら①の枠から出ます。そして②の「概ね3年」の起算点は、この場合、亡くなった日ではなく発覚した時期です1。
なお、ガイドラインは「特殊清掃」の意味を脚注で、孤独死などが発生した住居において原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービスとし、総務省行政評価局の報告書を引いています1,2。
②について、共用部分の扱いも定められています。借主が日常生活において通常使用する必要があり、住み心地の良さに影響を与えると考えられる集合住宅の共用部分は、賃貸借取引の対象不動産と同様に扱うとされ、脚注では、ベランダ等の専用使用が可能な部分のほか、共用の玄関・エレベーター・廊下・階段のうち通常使用すると考えられる部分が該当するとされています1。
告げる場合、何を書けばよいのか
前章の3つに当たらない場合は、判断に重要な影響を及ぼすと考えられるなら告げなければならない、とされています1。告げる中身も決まっています。
告げる4項目発生時期/場所/死因/特殊清掃等が行われた旨
特殊清掃等が行われた場合は、発生時期ではなく発覚時期です。死因が不明である場合は、その旨を告げます1。
そのまま照会した内容を、そのまま告げる
原文は「売主・貸主・管理業者に照会した内容をそのまま告げるべきである」としています。貸主が不明と答えた場合、あるいは無回答の場合は、その旨を告げれば足りるとされています1。
逆に、告げる必要がないと明記されているものもあります。ここは貸主の側でも押さえておく価値があります。
告げる際には、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない。
同 4.(4)1
そして、後日のトラブル防止の観点から、書面の交付等によることが望ましいとされています1。口頭で伝えただけにしない、ということです。
3年経っても、聞かれたら答えることになります
「概ね3年」だけが広く知られていて、この部分が抜けていることが多いので、独立して書きます。
これにかかわらず、取引の対象となる不動産における事案の存在に関し、人の死に関する事案の発覚から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、その社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等には、当該事案は取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられるため、宅地建物取引業者は、前記3.の調査を通じて判明した点を告げる必要がある。
同 4.(3)1
3年という期間は、宅建業者が自分から告げなくてよくなる期間です。聞かれた場合の答えを免除する期間ではありません。
ここで前の章に戻ります。聞かれたときに宅建業者が答えるのは「調査を通じて判明した点」です。その調査とは、貸主に告知書を書いてもらうことでした。告知書に書いていなければ、宅建業者は答えられません。そして、後で分かったときに宅建業者は適正に調査したものと扱われます1。
借主・買主の側から同じガイドラインをどう使えるかは借りる側・買う側から見た告知にまとめました。
ガイドラインが扱っていないこと
判断に迷いやすいのは、たいていこの範囲です。ガイドライン自身が、対象としていないものを挙げています。
- 建物を取り壊した後の土地取引一般的に妥当と整理できるだけの裁判例や実務の蓄積がないため、対象としていないとされています1。
- 搬送先の病院で亡くなった場合同じく対象外です1。
- 転落により亡くなった場合の落下開始地点の扱い同じく対象外です1。
- オフィス等として用いられる不動産契約締結の判断に与える影響が一様でないことから、対象外とされています1。
ガイドライン自身も、現時点で妥当と考えられる一般的な基準であり、将来において妥当しなくなる可能性も想定されるとしています1。この記事も、判断そのものを代わりに行うものではありません。個別の判断は、媒介をお願いする宅地建物取引業者にご相談ください。
清掃の範囲と、告知の判断はつながっています
ここが、当サイトから申し上げられることです。
①の自然死であっても、特殊清掃等が行われたかどうかで扱いが変わります1。そして特殊清掃等に当たるかどうかは、実際に何をしたかで決まります。
1作業の内容を、書面で残しておく
何を、どの範囲で行ったか。見積書と作業報告書を保管してください。告知書を書くときの材料になります。
2発覚した日付を記録しておく
②の「概ね3年」の起算点は、特殊清掃等が行われた場合は発覚時期です1。いつ分かったかを、後から作れる形にしないでください。
3消臭が終わっているかを確かめてから募集する
においが残っていれば、告知の話とは別に、入居後の申し出になります。書面の消臭保証の見方はチェックリストの記事にまとめました。
入居者が亡くなった日からの実務の流れは時間表の記事に、費用負担の切り分けは原状回復の検算の記事にあります。
この記事の要点
- 宅地建物取引業者には、人の死に関する事案を自発的に調査すべき義務までは認められていません。
- 媒介する宅建業者は、貸主・売主に告知書(物件状況等報告書)への記載を求めることで、調査義務を果たしたものとされます。
- 告知書等に記載しなかった事案が後日判明しても、宅建業者に重大な過失がない限り、調査は適正になされたものと扱われます。
- 自然死や日常生活の中での不慮の死は、賃貸・売買いずれも原則として告げなくてよいとされています。
- ただし長期間放置され特殊清掃等が行われた場合は、その原則から外れます。
- 賃貸借では、発覚から概ね3年を経過した後は原則として告げなくてよいとされています。売買についてこの3年の記載はありません。
- 期間や死因にかかわらず、借主・買主から問われた場合は、調査で判明した点を告げる必要があります。
よくあるご質問
告知書に書くと、次の入居者が決まりにくくなりませんか
その懸念は理解できます。ただガイドラインは、書かれなかった事案が後日判明しても宅建業者は適正に調査したものと扱うとしています。判断の結果は貸主の側に残ります。募集への影響と、後の紛争のどちらを取るかという判断になりますので、媒介する宅地建物取引業者と相談してお決めください。1
自然死で、特殊清掃もしていません。書く必要がありますか
ガイドラインは、自然死や日常生活の中での不慮の死は、賃貸・売買いずれも原則として告げなくてよいとしています。ただし、事件性・周知性・社会に与えた影響等が特に高い事案は別とされています。個別の判断は宅地建物取引業者にご確認ください。1
売買の場合も3年で告げなくてよくなりますか
ガイドラインの「概ね3年」は賃貸借取引についての記載で、売買取引についてこの期間の記載はありません。売買に3年を当てはめることはできません。1
共用部分で亡くなった場合はどうなりますか
借主が日常生活において通常使用する共用部分は、賃貸借取引の対象不動産と同様に扱うとされています。脚注では、ベランダ等の専用使用が可能な部分や、共用の玄関・エレベーター・廊下・階段のうち通常使用すると考えられる部分が挙げられています。通常使用しない共用部分は、原則として告げなくてよいとされています。1
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出典
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(令和3年10月)」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00061.html(2026-08-04取得)
- 総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書(令和2年3月)」https://www.soumu.go.jp/main_content/000675388.pdf(2026-08-05取得)
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