虫の種類を見れば、亡くなってからの日数が分かりますか
そうした研究分野はありますが、当サイトでは判定できませんし、この記事の出典である市の図鑑もそのための資料ではありません。日数に関わる判断は警察や専門機関の領域です。この記事でお伝えしているのは、発生源を探す方向を絞るための手がかりまでです。1
コラム/亡くなった後の実務
虫が出ている。そのこと自体がつらいので、まず殺したくなります。順番としては、それは後です。国が示している防除の考え方でも、最初に来るのは発生源対策です(虫が出てしまったとき)。
では発生源はどこか。手がかりは、出ている虫そのものにあります。虫の種類ごとに、何から発生するかが違うためです。名古屋市の衛生研究所が公開している図鑑から引きます。

虫は、どこにでも湧くわけではありません。種類ごとに、何を食べ、どこで幼虫が育つかが決まっています。だから、出ている虫が分かれば、発生源の性質が絞れます。
この記事で引くのは、名古屋市の健康福祉局衛生研究所が公開している「身の回りの『むし』たち web昆虫図鑑」です。市が自分の管内で見られる種を挙げて解説している資料で、虫の写真を見せて相談できる窓口も同じ市にあります(保健センターの環境薬務課)。
同定は、当サイトではできません
ハエの仲間は外観がよく似ています。図鑑もニクバエ類について「外観はいずれもよく似ていて、正確な同定は交尾器などによることが必要」と書いています1。
ですので、この記事は「この虫だから発生源はここです」と断定するものではありません。できるのは、図鑑に書かれている生態を並べて、確かめる方向を絞ることまでです。写真を撮っておいてください。清掃の会社にも、保健センターにも、それがいちばん早く伝わります。
いちばん最初に出るのが、この仲間です。図鑑の記述を並べます。
| 種類 | 図鑑に書かれている発生源 |
|---|---|
| キンバエ・クロバエ類(クロバエ科) | 成虫はおもに動物死体、人畜糞や厨芥に産卵し、幼虫はそれらを食べて成長する2 |
| ニクバエ類(ニクバエ科) | 新鮮な肉、腐敗物、人畜糞などから発生する1 |
| イエバエ類(イエバエ科) | 厨芥、畜舎、堆肥など、腐敗物で幼虫が育つ種類が多い3 |
| ノミバエ類(小型のハエ類) | 動植物質の腐敗したものから発生。台所の厨芥、汚水溝、排水管内なども発生源。昆虫死体で生育する種もある4 |
名古屋市 健康福祉局 衛生研究所「身の回りの『むし』たち web昆虫図鑑」より。
クロバエ類は金緑色や青藍色の金属光沢のあるものが多いとされ、日本には60種あまりがいます2。図鑑は、住環境で発生し細菌やウイルスなど病原の運搬者となることがあるとも書いています2。
「昨日まで何もなかったのに」の答えが、図鑑に書いてあります
ニクバエ類について、図鑑にこう書かれています。
雌成虫は母体内で孵化した仔虫を産み付けるので、数分の間目を離したすきに、食品上にウジが発見されたりすることがある。
名古屋市「ニクバエ類」1
卵から孵るのを待つ必要がありません。産み付けられた時点で、すでにウジです。「見回ったときは何もなかったのに、翌日ウジがいた」というのは、実際に起こります。ご自身の見落としではありません。
この仲間が出ている段階では、幼虫が育つだけの発生源が、まだどこかに残っています。殺虫剤で成虫を減らしても、そこが残れば次が出ます。順番の話は虫が出てしまったときに書きました。
ノミバエ類の記述に、見落としやすい一行があります。発生源として「汚水溝、排水管内」が挙げられていることです4。
長く人が住んでいなかったお部屋では、排水トラップの水(封水)が蒸発して切れていることがあります。そうなると、排水管の側とお部屋がつながります。床を掃除しても出続ける場合、見る場所が違っているかもしれません。
ノミバエ類は跳ねるような飛び方に特徴があるとされ、その名の由来にもなっています4。小さくて、まっすぐ飛ばずに跳ねるように動く虫が出ている場合は、水回りも確かめてくださいとお伝えしています。
確かめ方は、水を流すだけです
各所の排水口に、コップ1杯ずつ水を流してください。封水が切れていれば、それで戻ります。使っていない洗濯機の排水口、浴室の床、洗面台、そしてお部屋によっては床下の点検口。
これで収まるなら、発生源は室内の汚れではありませんでした。清掃の見積を取る前に確かめておくと、無駄な範囲を頼まずに済みます。
時間が経つと、出る虫が入れ替わります。湿ったものが乾いていくためです。
カツオブシムシ類は、図鑑では次のように説明されています。
幼虫あるいは成虫が動物質の乾物(干物、毛皮、毛製品、絹、動物標本、飼料など)の害虫となる種が多い。
名古屋市「カツオブシムシ類」5
名古屋市内では、ヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシ、カドマルカツオブシムシなどがよく見られるとされています5。ヒメマルカツオブシムシは体長約2〜3mmの小型の種で、黒褐色に黄色や灰白色の鱗片という記述です5。
照明器具の中も、発生源として挙げられています
同じページに、こう書かれています。
照明器具内の昆虫死骸も発生源となる。
名古屋市「ヒメマルカツオブシムシ」5
ハエが大量に発生したあと、その死骸が照明のカバーの中に溜まります。床と壁を清掃しても、天井の照明器具の中が残っていることがあります。
作業をお願いするときに、「照明器具の中も見てもらえますか」と一言添えてください。カバーを外すだけの作業です。
羊毛など動物性繊維製品への被害も挙げられていますので5、残された衣類やカーペットの扱いも、この段階では相談の対象になります。
清掃が終わったあとに出てくることがあるのが、この仲間です。
自由生活性で、地衣類やカビなどを摂食している。屋内で発生するものはコナチャタテ科に属するものが多い。
名古屋市「チャタテムシ類」6
体長は1〜10mm程度で、大量に発生した場合に不快害虫として問題になるとされています6。
食べているのがカビであれば、その部屋にはまだ湿気が残っているということになります。清掃と消毒が済んでいても、乾燥が足りていない、あるいは水分の供給元が残っている状態です。
床材を剥がして下地まで手を入れた場合は特に、乾かす工程に時間が要ります。日数の考え方は日数の決まり方の記事にまとめました。
なおゴキブリ類については、名古屋市内の屋内環境からヤマトゴキブリ、クロゴキブリ、トビイロゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリ、キョウトゴキブリ、チャバネゴキブリが見つかっている、と記録されています7。こちらは特殊清掃の現場に限らず出るもので、発生源を絞る手がかりにはなりにくい仲間です。
1殺す前に、1枚だけ写真を撮る
できれば定規や硬貨を横に置いて、大きさが分かるように。同定は専門の領域ですが、写真があれば会社にも保健センターにも伝わります。
2どこで見たかを、部屋ごとに控える
窓際に集まっているのか、水回りなのか、天井の照明のまわりなのか。場所は発生源の手がかりです。
3排水口に水を流す
封水が切れているだけのことがあります。これで収まるなら、清掃の範囲は変わります。
4見積のときに、照明器具と水回りを伝える
床と壁だけを見て出された見積では、天井の照明器具の中や排水まわりが範囲に入っていないことがあります。
虫について行政に相談したい場合、名古屋市では保健センターの環境薬務課が窓口です。他の市町村の方は、お住まいの保健所・保健センターにお尋ねください。窓口の一覧は困ったときの相談先にまとめています。
そうした研究分野はありますが、当サイトでは判定できませんし、この記事の出典である市の図鑑もそのための資料ではありません。日数に関わる判断は警察や専門機関の領域です。この記事でお伝えしているのは、発生源を探す方向を絞るための手がかりまでです。1
手遅れではありません。ただし成虫を減らしても、幼虫が育つ発生源が残っていれば繰り返します。国の防除の考え方でも、発生源対策が最初に置かれています。次の段階として、どこが発生源かを確かめてください。
出ている虫が何かで、見る場所が変わります。カビを食べる仲間であれば湿気が残っている合図ですし、動物質の乾物につく仲間であれば照明器具の中などに残っている可能性があります。作業をした会社に、種類と場所を伝えてご相談ください。6,5
隣室というだけでは、部屋に入ることも清掃を発注することもできません。動かせるのは貸主・管理会社、分譲であれば管理組合です。ご自身が借主であれば、貸主に対して言えることが条文にあります(/column/chinryou-gengaku/ にまとめました)。4
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