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コラム/相続と手続き
ひとりで暮らしている方へ亡くなった直後のことは、
誰がやるのか。
遺言書は財産の行き先を決めるものです。後見は生きている間のものです。そのあいだに、誰も担当がいない領域があります。
亡くなった直後の届出、部屋の解約、家財の処分。身近にご家族がいない場合、これを誰がやるのかが決まっていません。
条文は「死亡で終了する」と書いています
まず、意外に思われるかもしれない条文から。
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
民法 第653条1
そのままの意味です。何かを頼んでいた人が亡くなると、その委任は終わります。法律行為でない事務の委託(準委任)にも、この規定が準用されます1。
ですから条文だけを読むと、「亡くなった後のことを、生前に誰かに頼んでおく」という契約は成り立たないように見えます。
それでも、実務では使われています
「死後事務委任契約」という名前で、亡くなった後の届出・葬儀・部屋の片付けなどを生前に託す契約が使われています。
ただし、その有効性の根拠は裁判所の判断の積み重ねにあり、当サイトはその原文を確認していません。ですので「有効です」とも「無効です」とも書きません。
代わりに、国が公表しているひな形という確かなものがあるので、そちらを見ます。
ただし、急ぐ場合の定めはあります
委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
民法 第654条1
委任が終わっても、急を要する事情があるときは応急の処置をしなければならない、という定めです。ただしこれは「至るまで」の応急処置であって、亡くなった後の事務を丸ごと引き受ける根拠にはなりません。
国が公表しているひな形があります
賃貸にお住まいの方については、確かなものが用意されています。国土交通省と法務省が2021年に公表した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」です2。
これは、入居者ご本人が生前に、亡くなった場合の賃貸借契約の解除と残置物の処理をあらかじめ第三者に委任しておく形のひな形です。まさに死後の事務の委任にあたります。
組み立てはこうなっています3。
- 受任者は賃貸人自身とすることを避け、賃借人の親族や居住支援法人等を想定(利益が相反するため)
- 保管に適しない残置物(生鮮食品等)は死亡時に廃棄できる
- 指定されていない残置物は、死亡日から3か月が経過し、かつ賃貸借契約が終了したときに廃棄できる
期日の全体は次の募集までの時間表にまとめました。
2025年10月から、受け皿が法律に位置づけられました
ひな形が想定していた「居住支援法人等」という受け皿が、法律上の業務として明記されました。
賃借人である住宅確保要配慮者からの委託に基づき、当該住宅確保要配慮者が死亡した場合における…賃貸借契約の解除並びに…動産の保管、処分その他の処理を行うこと。
住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律 第62条第5号4
2025年10月1日施行です5。委託できるのは入居者ご本人だけで、亡くなった後に貸主が頼む制度ではありません。
ただし、居住支援法人の指定を受けていれば自動的にできるわけではなく、都道府県知事による残置物処理等業務規程の認可が別に必要です4。詳しくは居住サポート住宅と残置物処理に書きました。
いまできること
大がかりな契約を結ばなくても、決めておけることがあります。
1賃貸なら、残置物の委任を検討する
国と法務省のひな形があり、2025年10月からは居住支援法人が正式な業務として受けられます。ご自身が入居者の立場で決められる、数少ない手のひとつです。
2連絡してほしい人を、書いて置いておく
契約でなくても効きます。亡くなった後にいちばん困るのは「誰に連絡すればいいか分からない」ことです。紙1枚を目につく場所に置いておくだけで違います。
3専門家に頼む場合
弁護士・司法書士・行政書士が死後事務委任契約を扱っています。当サイトでは費用相場も受任者の選び方も書きません。根拠になる資料を確認していないためです。任意後見契約とあわせて相談されることが多い分野です(成年後見と任意後見の入口)。
4財産の行き先は、別に決める
死後事務は「手続き」の話で、「誰が財産を受け取るか」は遺言書の領域です。法務局が預かる制度は1通3,900円です(遺言書を法務局が預かる制度)。
よくあるご質問
死後事務委任契約は有効ですか
当サイトでは判断できません。民法653条は委任者の死亡によって委任が終了すると定めており、それでも実務で使われている根拠は裁判所の判断の積み重ねにあります。当サイトはその原文を確認していないため、有効とも無効とも書きません。弁護士・司法書士にご相談ください。1
賃貸に住んでいます。何ができますか
国土交通省と法務省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」というひな形を公表しています。入居者本人が生前に、亡くなった場合の契約解除と残置物処理を第三者に委任しておく形です。2025年10月からは、都道府県が指定する居住支援法人がこれを法律上の業務として受託できるようになりました。2,4
貸主です。入居者が亡くなってから頼めますか
この制度としては頼めません。条文は「賃借人である住宅確保要配慮者からの委託に基づき」と書いており、生前の委託が前提です。すでに亡くなっている場合は、相続人を探すか、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる従来の道になります。4
遺言書があれば足りますか
別のものです。遺言書は財産の行き先を決めるもので、亡くなった直後の届出や部屋の解約といった手続きは扱いません。両方を考えておく必要があります。
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出典
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「民法(明治29年法律第89号)第885条・第896条・第904条の3・第909条の2・第921条・第939条・第940条・第621条・第653条・第654条・第656条・第465条の2・第465条の4・第7条・第11条・第15条」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(2026-08-13取得)
- 法務省民事局「残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定について〜円滑に賃貸住宅の残置物を処理する方法をお示しします〜(令和3年6月7日)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00262.html(2026-08-05取得)
- 国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項(本文・解説コメント)」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001726434.pdf(2026-08-05取得)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)第40条・第59条・第62条・第64条・第66条・第70条」https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC1000000112(2026-08-11取得)
- 国土交通省「「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」を閣議決定〜本年10月1日から、居住サポート住宅の認定制度等がスタートします!〜(令和7年4月22日)」https://www.mlit.go.jp/report/press/house07_hh_000298.html(2026-08-11取得)
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