相談したことは、本人に伝わりますか
当サイトでは判断できません。名古屋市の条例には、市がこの条例の施行に必要な限度で居住者や所有者等の情報を関係機関等に提供できるという規定はありますが、相談した方の氏名をどう扱うかを定めた規定はありません。運用は市によって違う可能性があります。名前を出さずに伝えたい場合は、その希望を最初に窓口へ伝えて、扱いを確認してください。3
コラム/近隣の方へ
隣の家、あるいは同じ建物の別の部屋。物が積み上がって、においや虫、火の心配が出てきた。市役所に電話をした、あるいはこれからかけようとしている。そういう方に向けたページです。
総務省行政評価局が、30の市区で起きた181の事例を調べた報告書を出しています。相談が入ったあとに実際に何が動いたのかが、件数のまま書かれています。期待していたほど動かない部分と、思っていたより早く動く部分の、両方があります。

電話をかける前に、言葉のことをひとつだけ。行政の資料がこの状態を指すときに使うのは「不良な状態」「堆積物」という語です。いわゆる「ごみ屋敷」のほうは、かぎ括弧を付けた形でしか出てきません。理由のひとつは、総務省行政評価局の報告書が前書きに書いています。
「ごみ屋敷」事案に直接対応する法律や国の制度はない。
総務省行政評価局「「ごみ屋敷」対策に関する調査 結果報告書」令和6年8月1
専用の法律が無いので、動くとすれば市区町村の条例か、消防法や道路法といった既存の法令の側からになります。相談の受け先も、そこから先の進み方も、市ごとに違うのはそのためです。
名古屋市には条例があります。その市が出している説明資料の「対応のイメージ」は、相談・通報等の受付から始まり、支援と措置の2本に分かれる図でした2。支援の側には、こう書かれています。
不良な状態の解消は、自ら行うことを原則とします。市は居住者に対して不良な状態を解消するよう働きかけるとともに、必要に応じて次のような支援を行います。
名古屋市環境局「住居の堆積物による不良な状態への対策について」2
同じ資料の締めくくりは「根本的な解決をめざし、支援と措置を適切に組み合わせて対応していきます。」です2。条例の並びもそのとおりで、第7条が支援、第8条が指導及び勧告、第9条が命令、第10条が行政代執行3。支援が先で、措置が後です。
つまり、相談を受けた市がまず行うのは、堆積物を運び出すことではなく、住んでいる方に会いに行くことになります。ここが、多くの方の想像と違うところだと思います。
総務省は、181の事例について、市区がその状態を知ったきっかけを調べています。
総務省行政評価局「「ごみ屋敷」対策に関する調査 結果報告書」本文25ページの図12より1。合計181事例。
ご本人やご家族から相談が入るのは、13事例。残りのほとんどは、近隣の方の連絡か、別の用件で訪問した職員の気づきです。報告書に挙がっている情報提供の例は、「隣人から、敷地外に可燃物が堆積しており、火災の危険性ありと連絡」「周辺住民から、道路に物品が堆積しており、通行に支障ありと連絡」といったものでした1。
きっかけは、物がどこまで出ているかで分かれていました。敷地の外や家屋の外まで積み上がっている場合は近隣の方からの連絡が多く、家屋の中だけに積み上がっている場合は、支援のために本人の同意を得て家に入った職員が初めて気づく、という形が多くなっていました1。外から見えない段階では、近隣の方には分かりようがありません。
181事例について、市区がどこまで対応したかの内訳です。数字はすべて同じ報告書からで、複数の対応をしている事例が含まれます。
1定期的な状況把握 ── 9割以上の事例
いちばん多いのがこれです。訪問して状態を見に行き、記録を残す1。動きが見えないので何もしていないように思えますが、報告書上は最も多い対応です。
2法律・条例等に基づく撤去指導等 ── 113事例(約6割)
指導や勧告といった、根拠のある働きかけです。このうち解消に至ったのは37事例、約3割でした1。
運び出されていない98事例の側も、報告書は書いています。撤去指導等が行われていない事例が約2割(18事例)、排出支援の働き掛けが行われていない事例が約6割(63事例)1。堆積物は居住者により排出されるべきものなので積極的に関与していない場合もある、という市区の声も収録されています1。
「最後は行政が強制的に片付けてくれる」と思って読み始めた方に、いちばん伝えたい数字です。総務省は、条例を持つ12市区について、こう書いています。
当該12市区における調査対象事例(72事例)において、条例で定められている代執行が行われたのは1事例のみであった。
同報告書 本文29ページ1
脚注に、ほかに条例で定める応急措置が行われたものが1事例、道路法違反に対して行政代執行法に基づく代執行が行われたものが1事例ある、と添えられています1。72事例のうち、強制的な撤去が行われたのは合わせて3事例です。
市区が挙げている理由は3つでした。ひとつ目を、そのまま引きます。
代執行を行っても、居住者に堆積物を排出する意思がない限り、再発してしまう可能性が高く、居住者との関係を悪化させるだけとなりかねない
同報告書 収録の市区の意見1
残りは、指導・勧告・命令・審議会への意見聴取を経る必要があり文書作成等の負担が大きく実施まで時間を要すること、費用を居住者から回収できるかを考える必要があること、そして居住者が一時的に堆積物を撤去して撤去の意思を示し、意図的に代執行をさせないようにしていると思われるケースがあること1。
ここで、もうひとつ別の調査があります。環境省が全国の市区町村に毎年かけているものです。同じ「代執行」でも、数えている単位が違うので、並べておきます。
| 総務省行政評価局(令和6年8月) | 環境省(令和7年3月) | |
|---|---|---|
| 調べた相手 | 人口10万人以上の30市区。うち条例のある12市区1 | 全国1,741市区町村(回答率100%)。うち条例等制定済みの90市区町村4 |
| 数えた単位 | 選定した個々の事例(12市区で72事例)1 | 直近5年度の措置の適用件数(有効回答数1,111・複数回答可)4 |
| 代執行 | 1事例1 | 4件(0.4%)4 |
| いちばん多かったもの | 定期的な状況把握(181事例の9割以上)1 | 調査541件(48.7%)、次いで助言・指導391件(35.2%)、支援145件(13.0%)4 |
2つの調査は、対象も数え方も別です。合算はできません。当サイトで両報告書の該当ページを開いて確かめました1,4。
環境省の調査からは、もうひとつ。敷地内のごみを撤去したと回答した151市区町村のうち、原因者等の同意を得て撤去しているのは150市区町村(99.3%)でした4。行政が動く場合でも、ほぼすべてが本人の同意を得た撤去です。
名古屋市の相談先は、区役所でも保健センターでもありません。専用の担当があります。
窓口名古屋市 環境局 事業部 作業課
住居の不良堆積物対策の推進担当(市役所本庁舎4階)。電話 052-972-2288、ファクス 052-972-41332。条例についての問い合わせも、この課が受けています。
そのあとの進み方は、条例の条文の順番どおりです。飛ばせる段はありません。
相談・通報等の受付2。
居住者や関係者への報告の求め、市が保有する情報の利用、関係機関への情報提供の求め、そして建物等への立入調査3。立入調査を行う職員は身分証を携帯し、請求があれば提示します。この権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない、と条文に明記されています3。
情報の提供、助言その他の必要な支援。自分で解消することが困難と認めるときは、経費の支出を要する支援を行うことができます(この場合はあらかじめ審議会の意見を聴きます)3。
不良な状態を解消するために必要な措置を講ずるよう指導。指導をしようとするときは、あらかじめ区対策会議で協議します3。区対策会議は各区に置かれています。
指導しても解消されないと認めるときに、期限を定めて勧告。相手は堆積者に限られます3。
正当な理由なく勧告に従わないときに、期限を定めて命令。あらかじめ審議会の意見を聴かなければなりません3。
正当な理由なく命令に従わず、他の手段では履行の確保が困難で、放置することが著しく公益に反すると認めるとき。ここでも審議会の意見を聴いたうえで行い、要した費用は義務者から徴収されます3。
この順番の外側に、ひとつだけ別の条文があります。堆積物が人の生命、身体又は財産に重大な危害を及ぼす、あるいはそのおそれがある場合で、危害の発生を防止するために緊急の必要があると認めるときは、市長は必要な最小限度の措置を講ずることができます(第11条)3。費用は堆積者から徴収されます。倒れかけている、といった場面のための規定です。
罰則は過料だけです。立入調査を拒んだり妨げたりした場合に3万円以下、命令に違反した場合に5万円以下3。過料は秩序罰で、罰金や科料とは別のものです。
お住まいの市に、この条例があるとは限りません
環境省の令和6年度調査で条例等を制定済みと回答したのは、全国で90市区町村。1,741市区町村の5.2%です4。東海3県では、愛知7・岐阜5・三重2でした4。市町名は堆積物の条例がある市町に並べています。
条例が無い市でも、相談先が無いわけではありません。廃棄物処理法や環境保全条例、空家法の側で対応しているという回答が並んでいます4。
同じ住まいでも、どこに支障が出ているかで、根拠になる法令と担当が変わります。報告書のなかで実際に動いていた組み合わせを並べます。これは「こう言えば動く」という話ではなく、部署が別なので同じ話を両方に伝える必要がある、という話です。
| 出ている支障 | 報告書のなかで動いていた先 |
|---|---|
| 火災のおそれ | 181事例のうち半数以上の103事例で、市区が最も多く懸念していた項目。消防部局が対応に参画したのは26事例1 |
| 道路にはみ出している | 道路法違反に対して、行政代執行法に基づく代執行が行われた事例が1件あります1 |
| 市営・県営住宅の部屋 | 公営住宅が該当する事例は15事例(約1割)。公営住宅法や条例に基づく撤去指導、住宅の明渡し請求という手段があります1 |
| 民間の賃貸住宅の部屋 | 住宅管理者が居住者に対し、期限までに撤去しなければ強制退去するよう要請している事例がありました1 |
総務省行政評価局の報告書から、当サイトが該当箇所を抜き出しました1。
火災のおそれについては、期待の置き方に注意が要ります。消防法第3条第1項は、屋外において火災の予防に危険であると認める物件などについて「放置され、又はみだりに存置された物件……の整理又は除去」を命ずることができると定めていますが5、室内に踏み込む話ではありません。立入検査のほうには、こうあります。
個人の住居は、関係者の承諾を得た場合又は火災発生のおそれが著しく大であるため、特に緊急の必要がある場合でなければ、立ち入らせてはならない。
消防法 第4条第1項ただし書5
総務省も、市区町村や住民が火災発生のおそれを感じているからといって、直ちに消防法に基づく措置命令等や立入検査の権限を行使できるものではない、と書いています1。それでも消防が加わった意味はありました。消防部局が火災予防の観点から助言したところ本人が面会に同意し、ガスボンベの撤去から他の堆積物の排出まで進んだ事例が報告書に載っています1。
公営住宅については、明渡し請求まで進んで解消した例がある一方、公営住宅はセーフティネットとしての役割も担っているため強制力を伴う措置には慎重にならざるを得ない、という市区の声も収録されています1。分譲マンションの共用部分に及んでいる場合は、管理組合の側の手続きもあります(管理組合の方へ)。
正直に書きます。相談したから来月には片付く、という種類の話ではありません。
止まって見えるとき、担当者が動いていないとは限りません。181事例のうち健康面又は経済面の課題を抱えていた事例は131(約7割)で、多くが複数の課題を同時に抱えていました1。そこが動かないと、片付けだけでは戻ってしまうということが、上の再発の数字です。
解消した62事例のほうを見ると、約7割(45事例)で、ヘルパーによる訪問介護やケースワーカーの家庭訪問で家の中に入って状況を把握するか、市区の職員や関係機関による継続的な見守りが行われていました1。解消の道筋は、片付けそのものより、家に入れる人が増えることのほうにありました。
その間、近隣の方の側でできることを3つだけ挙げます。
1日付と状態を、短く記録しておく
いつ、どこまで物が出ていたか、においや虫がどうだったか。市が定期的な状況把握を続ける前提の対応をとる以上、外から見た変化は記録として意味を持ちます。写真を撮る場合は、他人の敷地に入らずに撮れる範囲にとどめてください。
2支障が出ている先ごとに、同じ話を伝える
火のこと、道路のこと、建物の管理のこと。前の章のとおり、動く部署が別です。報告書には、福祉の担当が環境の担当に協力を求めるという発想がなかった、という市区の声も収録されています1。
3ご自身の側の手当てを、切り離して進める
隣の家の片付けを、あなたが業者に頼むことはできません。他人の建物と持ち物だからです。一方で、ご自身の敷地に入り込んだ分や、ご自宅側のにおい・虫への手当ては、相手の同意を待たずに進められます。
ご家族の住まいのことで読まれている場合は、話がついた段階からが片付けの出番です。手を付ける順番と、先にそろえる物は物が積み上がった部屋を、ご家族で片付けるときにまとめました。片付いたあとに元へ戻さないための制度として、ごみを玄関先まで取りに来る高齢者等のごみ出し支援もあります。
当サイトでは判断できません。名古屋市の条例には、市がこの条例の施行に必要な限度で居住者や所有者等の情報を関係機関等に提供できるという規定はありますが、相談した方の氏名をどう扱うかを定めた規定はありません。運用は市によって違う可能性があります。名前を出さずに伝えたい場合は、その希望を最初に窓口へ伝えて、扱いを確認してください。3
総務省の調査では、調査対象30市区のすべてに未解消の事案があり、最長では39年間続いている事案がありました。法律・条例等に基づく撤去指導等が行われた113事例のうち、解消したのは37事例です。一方で、運び出されていない98事例のうち、撤去指導等が行われていない事例が約2割、排出支援の働き掛けが行われていない事例が約6割あったことも報告書に書かれています。前回いつ訪問したか、次に何をする予定かを窓口に尋ねるのは、無理な質問ではありません。1
消防法は、個人の住居について、関係者の承諾を得た場合か、火災発生のおそれが著しく大であるため特に緊急の必要がある場合でなければ立ち入らせてはならない、と定めています。総務省も、火災発生のおそれを感じているからといって直ちに措置命令等や立入検査の権限を行使できるものではない、と書いています。ただし調査では26事例で消防部局が対応に加わっており、火災予防の観点からの助言をきっかけに堆積物の排出まで進んだ事例がありました。伝える価値はあります。5,1
できません。他人の建物と持ち物なので、住んでいる方の同意なしに運び出すことはできません。環境省の調査でも、敷地内のごみを撤去したと回答した151市区町村のうち150市区町村(99.3%)が、原因者等の同意を得て撤去していました。行政が動く場合でも同意が前提です。ご自身の敷地に入り込んだ分の処理や、話がついたあとの片付けは、別の話として進められます。4
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