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コラム/相続と手続き

解体が終わった方へ建物の登記は、
1か月以内に閉じます。

解体工事が終わって更地になっても、法務局にある建物の登記記録はそのまま残っています。これを閉じる手続きが「建物の滅失の登記」です。

当サイトは解体の届出の記事で、この手続きについて「詳細を確認していません」と書いたままにしていました。その宿題を埋めます。期限は1か月、義務者は条文で名指しされていて、名義が亡くなった方のままの場合の答えも条文にあります。

畳・床・収納のある部屋のイラスト

期限は「滅失の日から一月以内」です

更地になっても、登記記録の中では建物がまだ建っています。これを閉じるのが建物の滅失の登記です。期限は条文に書かれています。

建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

不動産登記法 第57条(建物の滅失の登記の申請)1

起算点は「滅失の日」です。法務局の記載例では、申請書の「登記原因及びその日付」欄に証明書に記載された建物の取壊しの日を記載する、とされています2。解体業者から受け取る証明書の日付が、そのまま1か月の起点になると考えてください。

当サイトは解体を頼むとき、届出の義務は発注者にありますで、「解体したら、建物の登記を閉じる手続き(滅失登記)が必要になります」と書いたあと、詳細は確認していないと断って終えていました。ここから先が、その続きです。

名義が亡くなった方のままでも、申請できます

条文が名指ししているのは「表題部所有者又は所有権の登記名義人」です1。ここで手が止まる方が少なくありません。相続登記が済んでいない実家では、その名義は亡くなった方のままだからです。

答えは、同じ「表示に関する登記」の通則に置かれています。第57条は第4章第2節(表示に関する登記)の中にあり、その第1款・通則に次の条文があります。

表題部所有者又は所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表示に関する登記を申請することができる。

不動産登記法 第30条(一般承継人による申請)1

つまり、相続登記を先に終わらせなくても、建物の滅失の登記は相続人から申請できる建て付けになっています。名義を動かすほうは3年という別の期限で走っており1、そちらを待つと1か月は簡単に過ぎます。順番を分けて考えてください。相続登記そのものは相続登記の義務化にまとめました。

過料の義務まで相続人が引き継ぐかは、条文に書かれていません

第57条が義務を負わせている相手は、あくまで表題部所有者または所有権の登記名義人です1。亡くなった方名義のままの建物について、その申請義務を相続人が引き継ぐのかどうかまでは、条文に書かれていません。

当サイトではここを判断できません。相続人が複数いる場合に誰が申請人になるのか、どの戸籍を添えるのかも含めて、管轄の法務局にご確認ください。申請できること自体は第30条が定めています1。

過料の10万円は、住所変更登記の5万円とは別の枠です

罰則は第8章にまとまっています。1項と2項で金額が分かれていて、滅失の登記は1項のほうです。

…第五十七条…の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

不動産登記法 第164条第1項1

第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

不動産登記法 第164条第2項1

同じ法律の中に、期限の違う義務が3つ並んでいます。混ざりやすいので、整理しておきました。

申請するもの条文期限過料
建物の滅失の登記第57条滅失の日から1か月以内110万円以下1
相続登記第76条の2第1項取得を知った日から3年以内110万円以下1
住所等の変更の登記第76条の5変更があった日から2年以内15万円以下1

条文の番号と金額はe-Gov法令検索の不動産登記法から確認しました1。相続登記と住所変更の期限の詳しい説明は相続登記の義務化にあります。

いきなり請求書が届くわけではない点は、相続登記の記事に書いた流れと同じ条文の枠組みです。ただ、1か月という期限だけは、ほかの2つよりずっと短くなっています。解体の日程が決まった時点で、証明書を誰から受け取るかまで先に決めておくほうが確実です。

申請書に添えるのは、解体業者が出す証明書です

法務局は「不動産登記の申請書様式について」というページで、目次の4番に「建物の滅失」を置き、建物滅失登記申請書の様式と記載例を一太郎・Word・PDFの3つの形式で掲示しています3。手元でそのまま使えるものが、公的なページから入手できます。

記載例から、実際に用意するものを拾っておきました。

1建物滅失証明書

記載例の添付情報はこれです2。建物を取り壊した工事請負人の証明書を交付された場合には、その証明書を添付してくださいとされています。工事請負人が法人であれば、代表者の資格を証する書面と印鑑証明書も含みます2。解体を頼む段階で「滅失証明書はいただけますか」と確かめておいてください。

2会社法人等番号

工事請負人が法人の場合、記載例のとおり申請書にその法人の会社法人等番号を記載したときは、代表者の資格を証する書面と代表者の印鑑証明書の添付を省略することができるとされています2。番号も証明書と一緒に控えておくと手戻りがありません。

3申請人として書く住所・氏名

記載例では、登記記録の甲区に記録されている現在の登記名義人の住所と氏名を書き、甲区がない登記記録の場合は表題部の末尾に記録されている所有者を書く、とされています2。氏名の末尾には認印を押します2。

4住所がつながらないときの書類

登記記録上の所有者の住所が現在の住所と一致していない場合は、異動の経過が分かる住民票の写しや、戸籍の表示の記載のある戸籍の附票の写し等を添付してください、と案内されています2。何十年も名義を動かしていない実家では、ここが実際の作業量になります。

5不動産番号

不動産番号を記載したときは、所在・家屋番号・種類・構造・床面積の記載を省略することができるとされています2。登記事項証明書を先に取っておくと、書き写す量が減ります。

なお、どの建物が誰の名義で残っているか分からない場合は、先に持ち物を洗い出すほうが早いことがあります。固定資産課税台帳から探す方法は名寄帳の記事に、法務局側から探す方法は所有不動産記録証明制度の記事に書きました。

証明書は2通もらえるか聞いておく

法務局は、申請書に添付する書面について原本の添付が原則としたうえで、登記申請のためだけに作成したものや印鑑証明書等は原本の還付をすることができないと案内しています3。

取壊しの証明書を手元にも残しておきたい場合は、解体業者に2通発行してもらえるか、契約のときに確かめておくと安心です。

登記を閉じることと、税の窓口に知らせることは別です

法務局で登記を閉じても、市区町村の課税のほうが自動的に追いつくとは限りません。名古屋市は、家屋を取り壊した場合の扱いをこう案内しています。

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日現在存在する家屋の所有者に対して、その年の4月から始まる年度1年分課税される税金です。したがって、年の途中で家屋を取り壊しても、1年度分の税金をお支払いいただく必要があります。

名古屋市「年の途中で家屋を取り壊した場合、固定資産税・都市計画税はいつまで支払う必要があるか知りたい。」4

同じページには、家屋の取り壊しをしたら、家屋が所在する区を担当する市税事務所固定資産税課家屋担当まで知らせてほしいこと、そのうえで申告書などの提出は不要であることが書かれています4。登記の申請とは窓口が別なので、両方に手が要ると考えてください。

これは名古屋市の案内です。他の市町村では窓口の名前も扱いも変わりますので、お住まいの自治体でご確認ください。土地の側の税がどう動くかは解体の記事に書いています。

自分で出すか、土地家屋調査士に頼むか

表示に関する登記の申請手続を、他人の依頼を受けて代理するのは土地家屋調査士の業務です。

調査士は、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。…二 不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理

土地家屋調査士法 第3条第1項第2号(業務)5

ご自身で申請することもできます。様式と記載例は法務局のページから入手できますし3、添付するものも上に挙げたとおりです。ただ、住所がつながらない、相続人が何人もいる、建物の一部だけを壊した、といった事情があると、途端に難しくなります。報酬の額を当サイトは把握していないため、金額の目安は書きません。2人以上の土地家屋調査士に見積を取って比べてください。

「そのうち登記官が消してくれる」とは書かれていません

不動産登記法には、表示に関する登記は登記官が職権ですることができる、という条文があります1。ただしこれは登記官の側の権限を定めたもので、放っておけば登記が閉じられる、と読める条文ではありません。

申請の義務は第57条に、期限は1か月と書かれたままです1。売却や次の建築の話が出てから慌てるより、証明書を受け取ったその足で進めるほうが手数は少なくなります。

この記事の要点

よくあるご質問

解体業者が滅失登記もやってくれると言っています

実務では、業者が土地家屋調査士を手配する形がよくあります。ただし表示に関する登記の申請手続を依頼を受けて代理できるのは土地家屋調査士です。誰が申請人になり、誰が代理するのかを確かめて、完了後に登記完了証や登記事項証明書で閉じられたことを確認してください。5

取り壊してから1か月をとっくに過ぎています

期限を過ぎたからといって、申請ができなくなるわけではありません。条文は「正当な理由がないのにその申請を怠ったとき」に10万円以下の過料と定めているだけで、実際にどう扱われるかは当サイトでは判断できません。気づいた時点で、管轄の法務局にご相談ください。1

相続登記が終わっていません。先に名義を移すべきですか

不動産登記法30条は、表題部所有者または登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人が表示に関する登記を申請することができると定めています。滅失の登記のために相続登記の完了を待つ必要はない建て付けです。必要な添付書類は法務局にご確認ください。1

登記されていない建物だったようです

登記記録がなければ、閉じる登記記録もありません。ただし課税のほうでは家屋として扱われていることがあります。名古屋市は、取り壊したら市税事務所固定資産税課の家屋担当へ知らせてほしいと案内しています。まず登記事項証明書が取れるかどうかで、登記の有無を確かめてください。4

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出典

  1. e-Gov法令検索(デジタル庁)「不動産登記法(平成16年法律第123号)第28条・第30条・第57条・第76条の2・第76条の3・第76条の5・第164条」https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123(2026-08-12取得)
  2. 法務局(法務省)「建物滅失登記申請書 記載例(PDF・R6.3.29更新。建物を取り壊し建物の滅失の登記を申請する場合のもの。登記の目的「建物滅失」、添付情報「建物滅失証明書(会社法人等番号…)」。注1=建物を取り壊した工事請負人の証明書を交付された場合は当該証明書を添付、法人の場合は代表者の資格を証する書面及び印鑑証明書を含むが、申請書に当該法人の会社法人等番号を記載したときは添付を省略できる。注3=申請人には登記記録の甲区に記録されている現在の登記名義人の住所と氏名を記載し、甲区がない登記記録の場合は表題部の末尾に記録されている所有者を記載、氏名の末尾に認印を押す、登記記録上の住所が現在の住所と一致していない場合は住民票の写し・戸籍の附票の写し等を添付。注5=不動産番号を記載したときは所在、家屋番号、種類、構造及び床面積の記載を省略できる。注6=「登記原因及びその日付」欄には証明書に記載された建物の取壊しの日を記載)」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001189459.pdf(2026-09-05取得)
  3. 法務局(法務省)「不動産登記の申請書様式について(更新日2026年1月7日。目次「4 建物の滅失」に対応する本文「4 建物滅失登記申請書」で、様式(一太郎・Word・PDF)【R1.5.10更新】と記載例(一太郎・Word・PDF)【R6.3.29更新】を掲示。共通の注意事項として、登記申請書に添付する書面は原本の添付が原則、申請人が原本を保管する必要があるものは原本の還付を請求できるが、登記申請のためだけに作成したもの(委任状・登記原因証明情報等)や印鑑証明書等は原本の還付をすることができない、と記載)」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html(2026-09-05取得)
  4. 名古屋市「年の途中で家屋を取り壊した場合、固定資産税・都市計画税はいつまで支払う必要があるか知りたい。(固定資産税・都市計画税Q&A/2025年10月17日更新。固定資産税・都市計画税は毎年1月1日現在存在する家屋の所有者に対しその年の4月から始まる年度1年分課税されるため、年の途中で家屋を取り壊しても1年度分の支払いが必要。家屋の取り壊しをしたら、家屋が所在する区を担当する市税事務所固定資産税課家屋担当まで知らせること、申告書などの提出は不要であること)」https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1035069/1012012/1012042/1033985/1012045.html(2026-09-05取得)
  5. e-Gov法令検索(デジタル庁)「土地家屋調査士法(昭和25年法律第228号)第3条第1項第2号(業務。調査士は他人の依頼を受けて「不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理」を行うことを業とする)」https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000228(2026-09-05取得)

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