手数料はいくらかかりますか
法務局は「本制度は、無料でご利用いただけます」としています。ただし戸籍謄本の取得には所定の手数料がかかり、郵送による申出や一覧図の交付には郵送料が必要です。かからないのは、写しの交付にかかる手数料の部分だとお考えください。4,3
コラム/相続と手続き
相続登記、預貯金の解約、年金の手続き。どれも「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍」と「相続人全員の戸籍」を求められます。窓口ごとに束を出しては返してもらい、また次の窓口へ持っていく。そこで止まっている方に向けて書きます。
法務局に一度だけ束を出せば、認証文の付いた一覧図の写しが、手数料なしで必要な通数だけ交付されます。以後はその1枚を、束の代わりに各窓口へ出せます。

正式には法定相続情報証明制度といいます。法務局の説明を、そのまま引きます。
本制度は、相続人から相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)とともに、戸除籍謄本等の束を登記所に提出していただき、一覧図の内容が民法に定められた相続関係と合致していることを登記官が確認した上で、その一覧図に認証文を付した写しを無料で交付するというものです(平成29年5月創設)。
法務局「『法定相続情報証明制度』について」1
不動産が複数の管轄にまたがっていると、それぞれの所在地を管轄する法務局に束を出さなければなりません。一覧図の写しは束の代わりに相続登記へ使えるため、複数の法務局に束を出す必要がなくなります1。行政庁や金融機関などの相続関係手続にも使えるので、束を何度も出し直さずに済みます1。
写しを使える手続として法務局が挙げているのは、相続登記の申請手続のほか、被相続人名義の預金の払戻し手続、相続税の申告、被相続人の死亡に起因する年金等手続などです1。未支給年金の請求でも、続柄を確認できる書類として戸籍謄(抄)本と並べて「法定相続情報一覧図の写し」が挙げられています2。
不動産がなくても使えます
法務省民事局の資料は、被相続人名義の不動産がない場合(例えば、遺産が銀行預金のみの場合)でも利用することが可能としています3。相続登記のための制度と思われがちですが、口座の解約と年金の手続きだけの方にも意味のある制度です。
法務局の「よくあるご質問」は、手数料について「本制度は、無料でご利用いただけます。」と答えています4。法務省民事局の資料も同じで、「交付に当たり、手数料は徴収しない」と明記しました3。
ただし、ここは正確に分けておいてください。かからないのは一覧図の写しの交付にかかる手数料です。戸籍謄本の取得には所定の手数料が必要で、郵送による申出や交付には郵送料がかかります4。
1必要な通数を、まとめて出してもらえます
一覧図の写しは、相続手続に必要な範囲で複数通発行できます3。必要な通数は、申出書の欄に書き込む形です。銀行が3行、証券会社が1社、年金の窓口が1か所。その分をまとめて求めておけば、手続きは同時に進みます4。
2出した戸籍は、返してもらえます
「戸籍謄本等は、一覧図の写しを交付する際に併せて返却します」とされています4。集めた束が取り上げられるわけではありません。束は手元に残り、写しが増えるという形です。
3専用紙で交付されます
一覧図の写しは、偽造防止措置の施された専用紙で作成されます3。手元のコピー機で増やす紙ではないので、通数は申出のときに決めておいてください。
手続きは3段階です。STEP1 必要書類の収集/STEP2 法定相続情報一覧図の作成/STEP3 申出書の記入、登記所へ申出5。集めるものは、次のとおりです。
| 書類 | 取得先 |
|---|---|
| ①被相続人の戸除籍謄本(出生から亡くなるまでの連続した戸籍謄本及び除籍謄本) | 被相続人の本籍地の市区町村役場4 |
| ②被相続人の住民票の除票 | 被相続人の最後の住所地の市区町村役場4 |
| ③相続人全員の現在の戸籍謄本又は抄本(被相続人が死亡した日以後の証明日のもの) | 各相続人の本籍地の市区町村役場4 |
| ④申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(運転免許証の表裏両面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票記載事項証明書 など) | ──4 |
| ⑤各相続人の住民票記載事項証明書(一覧図に相続人の住所を記載する場合。印鑑証明書や戸籍の附票でも代用可) | 各相続人の住所地の市区町村役場4 |
| ⑥委任状ほか(委任による代理人が手続をする場合) | 親族が代理するときは親族関係が分かる戸籍謄本4 |
| ⑦被相続人の戸籍の附票(②が廃棄されているなどして取得できない場合) | 被相続人の本籍地の市区町村役場4 |
①〜④が「必ず用意する書類」、⑤〜⑦が「必要となる場合がある書類」です。法務局「法定相続情報証明制度の手続の流れ」(令和8年3月1日改訂)より4。④のコピーには、原本と相違がない旨を記載して申出人(又は代理人)の記名をします4。
一覧図そのものは、申出人か代理人が作ります。書くのは、被相続人の最後の住所・出生・死亡年月日と、相続人の氏名・生年月日・続柄。用紙はA4サイズの白い紙です4。様式と記載例は法務局が公開しているので、白紙から考える必要はありません5。手書きも、明瞭に判読できるものであれば可とされています3。
申出をする登記所は、次の地を管轄する登記所のいずれかを選べます5。
4つのうち、動きやすい1か所を選んで構いません。申出や一覧図の写しの交付は、登記所に行くほか、郵送でもできます5。郵送を希望する場合は、その旨を申出書に書いたうえで、返信用の封筒と郵便切手を同封します5。
窓口で受け取る場合は、受取人の確認のため、申出書の「申出人の表示」欄に書いた住所・氏名と同じものが記載された公的書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票記載事項証明書など)を持参してください5。
| 項目 | 法務局の説明 |
|---|---|
| 申出人になれる方 | 被相続人の相続人(又はその相続人)5 |
| 代理を頼める相手 | 親族のほか、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士5 |
| 使えない場合 | 被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸除籍謄抄本を提出することができない場合5 |
代理人は法定代理人のほか、上記の親族と資格者代理人に限られます3。
写しが足りなくなっても、戸籍を集め直す必要はありません。法務局はこう書いています。
法定相続情報一覧図は、5年間(申出日の翌年から起算)保存されますので、この間であれば再交付を受けることができます。
法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」5
再交付を受けられるのは、当初の申出において申出書に「申出人」として氏名を記載した方だけです5。申出人にならなかった他の相続人は、そのままでは再交付を受けられません5。他の相続人が希望する場合は、当初の申出人からの委任が必要になります3。
きょうだいで手分けして手続きを進めるつもりなら、誰を申出人にするかを最初に決めておいたほうが後が楽です。再交付の申出は、当初の申出をした登記所(一覧図が保管されている登記所)で受け付けます5。用意するのは再交付申出人の氏名・住所を確認できる公的書類で、婚姻等により氏が変わっている場合は、その内容が分かる戸籍謄抄本が要ります7。
令和6年4月1日から使える、法定相続情報番号
相続登記そのものの期限は、所有権の取得を知った日から3年以内です。令和6年4月1日以降、申請が義務化されています1,9。期限の数え方は相続登記の義務化にまとめています。
ここが、いちばん誤解されるところです。一覧図は戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにするもので、その後に起きたことは反映されません5。
相続放棄や遺産分割協議の結果によって、実際には相続人とならない方(相続分を有しない方)がいる場合も、法定相続情報一覧図にはその方の氏名等が記載されます。
法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」5
令和8年3月1日改訂の案内も同じです。相続放棄をした相続人がいる場合も、一覧図には氏名、生年月日及び続柄を記載してくださいとあります4。交付される写しには、認証文の下にこういう注記が入ります。
注)本書面は、提出された戸除籍謄本等の記載に基づくものである。相続放棄に関しては、本書面に記載されない。また、被相続人の死亡に起因する相続手続及び年金等手続以外に利用することはできない。
法務省民事局「〜法定相続情報証明制度について〜」記載例の注記3
1相続放棄をしたことの証明にはなりません
放棄をした方も一覧図に載ります。放棄や遺産分割協議の書類は別途必要です3。放棄の申述は家庭裁判所の手続で、期限は3か月です(相続放棄と、部屋の片付け)。
2遺産分割協議書の代わりにもなりません
誰が何を取得したかは、一覧図には出てきません。分け方が決まらないときの進め方は遺産分割がまとまらないときに書いています。
3続柄を「子」と書いたときの落とし穴
続柄は、申出人の選択により「子」と記載しても差し支えないとされています。ただしその場合は、相続税の申告等、これを利用することができない手続があります4。戸籍に記載される続柄(長男・長女など)を書いておけば、原則として相続税の申告書の添付書類に使えるというのが法務局の説明です10。相続税の申告を予定しているなら、戸籍どおりに書いてください。
4廃除された方は、記載されません
推定相続人から廃除された方は、相続権がはく奪されているため一覧図に記載されません5。放棄とは扱いが逆になります。
写しを使って手続きをとるときは、あらかじめ、提出先に一覧図の写し以外で必要となる書類をたずねてくださいと法務局は案内しています5。1枚あれば全部片付く、という制度ではありません。束を持ち歩く手間が消える制度です。
この制度は、戸籍を集め終えたところから始まります。集める段階が短くなれば、そのぶん全体も短くなる、という関係です。
令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できます6。請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属で、兄弟姉妹は含まれていません6。詳しくは戸籍の広域交付へ。
A4の白紙に相続関係を書き、住民票の除票と相続人全員の戸籍を添えて登記所へ4。ここで通数を決めます。
相続登記、預金の払戻し、相続税の申告、年金等手続1。同時に出せるので、待ち時間が重なりません。
もうひとつ、申出のときに決めておくと後で効くことがあります。一覧図に相続人の住所を記載しておくと、相続登記等の申請で相続人の住所を証する情報(住民票の写し)を提供しなくても差し支えないとされています10。住所の記載は任意です。記載するなら、各相続人の住民票記載事項証明書等をあわせて出すことになります4。手間を前に寄せるか、後に残すかの選択です。
不動産が何件あるか分からないときは、先に名寄帳で洗い出しておくと、申出先の選択(不動産の所在地)も決めやすくなります。期限のある手続きは一覧に並べています。
法務局は「本制度は、無料でご利用いただけます」としています。ただし戸籍謄本の取得には所定の手数料がかかり、郵送による申出や一覧図の交付には郵送料が必要です。かからないのは、写しの交付にかかる手数料の部分だとお考えください。4,3
戸籍謄本等は、一覧図の写しを交付する際に併せて返却されるとされています。ただし、申出人の氏名・住所を確認する公的書類は返却されません。住民票の写しの原本を他の手続に使いたい場合は、原本とコピー(原本と相違がない旨を記載し、申出人の記名をしたもの)を併せて提出するよう案内されています。4,5
外せません。法務局は、相続放棄をした相続人がいる場合も一覧図には氏名、生年月日及び続柄を記載するとしています。一覧図は戸除籍謄本等の記載に基づく法定相続人を示すもので、放棄の事実は記載されません。放棄を示す書類は、家庭裁判所の手続で得たものを別に用意することになります。4,5
再交付を受けられるのは、当初の申出書に「申出人」として氏名を記載した方に限られます。他の相続人が再交付を希望する場合は、当初の申出人からの委任が必要とされています。まずは、申出をしたご家族に一度ご相談ください。5,3
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