売る期限は、結局いつまでですか
国税庁は「相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に譲渡していることを要件としています。相続税の申告期限は、死亡したことを知った日の翌日から10か月です。まずご自身の申告期限の日付を確かめ、その翌日から3年を数えることになります。最終日そのものは日単位の当てはめが要りますので、所轄の税務署でご確認ください。1,3
コラム/相続と手続き
相続税の申告と納税を終えて、次は家をどうするかという段階に入った。売ると決めたなら、業者に相談する前に日付を一度確かめてください。
納めた相続税のうち一定の金額を、売ったときの取得費に加えられる特例があります。期限は「相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」。この起算点の書き方が、ほかの特例と違います。

国税庁の「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」です1。名前は地味ですが、売る時期を左右します。まず期限から書きます。
その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
国税庁 タックスアンサー No.3267 特例の適用を受けるための要件(3)1
「相続から3年」でも「申告から3年」でもありません。相続税の申告期限を先に出して、そのさらに翌日から3年を数えます。根拠の条文も同じ書き方です2。
| 段 | 出すもの | 決まり方 |
|---|---|---|
| 一段目 | 相続税の申告期限 | 被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内3。相続税法27条1項の期限です4 |
| 二段目 | 譲渡の期限 | 相続開始のあった日の翌日から、その申告期限の翌日以後3年を経過する日まで1 |
申告期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限とみなされます3。
国税庁は申告期限の例として、1月6日に死亡した場合はその年の11月6日が申告期限と書いています3。この例で言えば、譲渡の期限は11月6日の翌日から3年を数えた先にあります。相続税の10か月と合わせると、3年10か月ほどの幅になるという計算です(当サイトの計算です)。
最終日そのものは、税務署で確かめてください
当サイトは、あなたの場合の最終日を年月日で書きません。「翌日以後3年を経過する日」は日単位の当てはめが必要で、しかも一段目の申告期限が土日祝で動くことがあるためです3。
売買の日取りを詰める前に、所轄の税務署か税理士に「この特例の譲渡期限は何月何日までか」を確かめてください。売った後では、日付を動かせません。
ここで対象から外れる方がいます。要件は3つで、真ん中がそれです1。
1相続や遺贈により財産を取得した者であること
相続または遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます)で財産を取得した個人が対象です1,2。
2その財産を取得した人に相続税が課税されていること
条文の側は「当該相続又は遺贈につき同法の規定による相続税額があるもの」と書いています2。国税庁は、取得した財産の価額の合計額が遺産に係る基礎控除額の範囲内であれば申告も納税も必要ない、としています3。その場合は相続税額がないので、この特例は関係しません。
3期限内に譲渡していること
前の章の日付です1。
対象になる財産は、相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産です1。ただし国税庁は注として、この特例は譲渡所得のみに適用がある特例なので、株式等の譲渡による事業所得および雑所得については適用できない、と書いています1。
相続税がかかるかどうかが、まだ分からない段階の方へ
相続税の申告そのものの期限は10か月で、この特例の期限より先に来ます。話し合いがまとまっていなくても申告は来る、という話は相続税の申告は10か月にまとめました。
先に何があるかを洗い出すなら、不動産は名寄帳でまとめて確認できます。
加算する相続税額は、国税庁が示している次の算式で計算します1。
国税庁 No.3267「計算方法・計算式」より1。
相続税額そのものではなく、相続税額のうち、売った財産に対応する分が乗ってくる形です。そのうえで、上限があります。
ただし、その金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益(土地、建物、株式などを売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。)の金額を超える場合は、その譲渡益相当額となります。
国税庁 タックスアンサー No.32671
つまり譲渡益を超えて加算されることはなく、この特例で赤字(譲渡損)を作ることはできません。また「なお、譲渡した財産ごとに計算します」とされており1、条文も加算する金額は譲渡をした資産ごとに計算すると定めています2。土地と建物、あるいは複数の不動産を売るなら、まとめてではなく1件ずつの計算になります。
金額の試算は、当サイトではできません
この算式には、あなたの相続税額と、申告書に載せた財産ごとの評価額が必要です。当サイトはそれを検証できないため、いくら安くなるかは書きません。
国税庁は「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を用意していて、この明細書を利用すると取得費に加算される相続税額を計算することができる、としています1。手元の相続税申告書の控えと合わせて、税務署か税理士にご確認ください。
相続した実家を売るときに名前が挙がるもうひとつの特例が、空き家の3,000万円控除です。この2つは、同じ家屋と敷地について両方を受けることができません。空き家控除の要件に、こう書かれています。
売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
国税庁 タックスアンサー No.3306 特例の適用を受けるための要件(5)5
先に一方を選ぶ、という関係です。性質がかなり違うので、比べる軸を並べます。
| 比べる軸 | 取得費加算(この記事) | 空き家3,000万円控除 |
|---|---|---|
| 効き方 | 相続税額のうち一定額を取得費に加算1 | 譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除5 |
| 相続税 | その財産を取得した人に相続税が課税されていることが要件1 | 相続税の課税は要件に挙がっていません5 |
| 譲渡の期限 | 相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで1 | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。あわせて令和9年12月31日までの譲渡が対象5 |
| 対象 | 相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産1 | 被相続人居住用家屋とその敷地等(昭和56年5月31日以前の建築など、細かい要件があります)5 |
| 上限 | この特例を適用しないで計算した譲渡益相当額まで1 | 最高3,000万円。令和6年1月1日以後の譲渡で取得した相続人の数が3人以上の場合は2,000万円5 |
国税庁 No.3267 および No.3306 の記載を並べたものです。どちらの特例も、ここに書いていない要件があります。
期限の切れ方も違います。空き家控除は年末で切れるため、年をまたぐと終わります。取得費加算は年末とは無関係に、申告期限の翌日から3年を経過する日で切れます。売却の時期を決める前に、2つの日付を並べて書き出してみてください。
期限内に売っただけでは足りません。条文は、適用の条件をこう定めています。
前項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書又は修正申告書…に、前項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、同項の規定による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
租税特別措置法 第39条第2項2
書かなければ付きません。売った翌年の確定申告で、自分から申し出る形になります。所得税の確定申告の期限は、原則としてその年の翌年3月15日です6。
国税庁が挙げている提出書類は次の2つです1。所轄の税務署に、確定申告書に添えて提出します。
なお条文には、確定申告書の提出がなかった場合や記載・添付がなかった場合でも、そのことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、書類の提出があった場合に限り適用することができるという定めもあります2。ただし当サイトでは、どんな事情がこれに当たるかを判断できません。
売るほうが、相続税の申告より先になった場合
亡くなった時期によっては、売った年の確定申告期限(原則3月15日)のほうが、相続税の申告期限より先に来ることがあります6,3。そのときは、確定申告の時点で相続税額が決まっていません。
条文には、その場合の道が書かれています。譲渡した年分の確定申告期限の翌日から相続税の申告期限までの間に相続税の期限内申告書を提出した方は、その提出をした日の翌日から2月を経過する日まで、税務署長に対して更正の請求をすることができる2。ただし確定申告期限までにすでに相続税の申告書を出していた方などは、この号から除かれています2。
当てはまるかどうかは所轄の税務署でご確認ください。2か月という短い期間なので、相続税の申告書を出した日を控えておいてください。
税の特例は要件が細かく、当サイトが全部を検証できるわけではありません。書いていない範囲をはっきりさせておきます。
相続税のほうで実家の土地の評価が下がる特例(小規模宅地等の特例)については別の記事にまとめました。そちらは申告期限まで持ち続けることが要件になる区分があり、この記事の「早く売る」という話と向きが逆になることがあります。売る時期は、両方を見てから決めてください。
国税庁は「相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に譲渡していることを要件としています。相続税の申告期限は、死亡したことを知った日の翌日から10か月です。まずご自身の申告期限の日付を確かめ、その翌日から3年を数えることになります。最終日そのものは日単位の当てはめが要りますので、所轄の税務署でご確認ください。1,3
要件のひとつが「その財産を取得した人に相続税が課税されていること」です。条文も「相続税額があるもの」と書いています。取得した財産の価額の合計額が遺産に係る基礎控除額の範囲内で、申告も納税もしていない場合は、この特例の対象にはなりません。売却で譲渡益が出るかどうかは別の話ですので、確定申告の要否は税務署でご確認ください。1,2,3
空き家3,000万円控除の要件に「売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」とあります。同じ家屋と敷地について、両方を受けることはできません。どちらが有利かは相続税額や取得費によって変わり、当サイトでは判断できません。売買契約の前に税務署または税理士にご相談ください。5,1
相続税の申告書の控えを必ず残してください。この特例の計算明細書を作るときに、申告書に載せた財産ごとの評価額が要ります。あわせて、亡くなった方が家を買ったときの売買契約書と領収書、登記の権利証、固定資産税の納税通知書も取り分けてください。取得費が分からないと、譲渡所得の計算で不利になることがあります。1
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