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コラム/相続と手続き

名義を移す前に税額は、納税通知書だけで
出せます。

相続登記をしようと思ったときに、まず分からないのが「いくらかかるのか」です。自分で申請するか、司法書士に頼むか。それを決める前に、金額の見当がつかないと動けません。

このうち国に納める分(登録免許税)は、固定資産税の納税通知書があればご自身で計算できます。税率も、端数の落とし方も、法律と法務局の資料に書いてあるからです。ここでは、その手順だけを書きます。

机に広げた書類と電卓、ルーペ

使う数字は「課税標準額」ではなく「価格」です

手元に用意するのは、毎年春に市町村から届く固定資産税の納税通知書に付いている課税明細書です。どこに何を持っていたのかがまだ分からない段階なら、先に名寄帳で洗い出すほうから読んでください。

明細書には、金額の欄がいくつも並んでいます。使う欄は決まっています。

固定資産課税台帳の価格とは、固定資産課税明細書において、一般的に「価格」又は「評価額」と表記されている価格であり、「固定資産税課税標準額」ではありません。

法務局「登録免許税の計算」1

国税庁も、課税標準となる「不動産の価額」は、市町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は原則その価格である、としています2。ここを取り違えると、税額そのものが変わります。

  • 明細書が見つからない市町村役場が発行する証明書で価格を確認できます1。
  • 価格がついていない土地がある公衆用道路(私道)などです。この場合は登記所(法務局)が認定した価額になるので、その不動産を管轄する登記所に問い合わせます1,3。
  • 持分だけを相続したその不動産の価額に持分の割合を乗じた額が課税標準になります4。

法務局は、使わない欄の名前まで挙げています

「固定資産税課税標準額」ではない、とわざわざ断ってあります1。課税明細書には似た名前の欄が並ぶので、ここは読み間違えやすいところです。

台帳に価格がない不動産は、登記官(登記所)が認定した価額になります2,1。金額は登記所に確かめるほかありません。私道や山林が混ざっているなら、先に管轄の法務局にお尋ねください。

計算は3段階。端数は2回落とします

順番はこうです。電卓があれば足ります。

  1. 一 課税価格を出す

    台帳の価格から1,000円未満を切り捨てます。複数の不動産を同じ申請書で出すときは、それぞれの価格を合計してから切り捨てます1。合計しても1,000円に満たないときは1,000円です4,5。

  2. 二 税率を掛ける

    相続による所有権の移転登記は1,000分の4(0.4%)です2,4。土地でも建物でも同じ税率で、軽減税率はありません2。

  3. 三 税額の端数を落とす

    出た金額の100円未満を切り捨てます5,1。切り捨てた結果が1,000円に満たないときは、1,000円になります4。

三段目の「1,000円に満たないときは1,000円」は、条文にそのまま書かれています。

別表第一に掲げる登記又は登録につき同表に掲げる税率を適用して計算した金額が千円に満たない場合には、当該登記又は登録に係る登録免許税の額は、千円とする。

登録免許税法 第19条(定率課税の場合の最低税額)4

100円未満の切り捨てのほうは、登録免許税法ではなく国税通則法にあります。国税の確定金額に百円未満の端数があるとき、又はその全額が百円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる、という条文です5。実際に当てはめると、次のようになります。

不動産台帳の価格課税価格(1,000円未満切捨て)登録免許税(100円未満切捨て)
土地1筆1,234,567円1,234,000円4,900円
建物1棟3,246,600円3,246,000円12,900円
物置など、評価の低い建物240,000円240,000円1,000円(最低税額)
土地1筆980,000円―0円(次の章の免税)

税率1,000分の4は国税庁と登録免許税法2,4、端数の扱いは法務局の資料と国税通則法1,5によります。この4例は、当サイトがその決まりに当てはめて計算したものです。法務局の資料に載っている計算例は売買(1,000分の15・1,000分の20)のものです1。

100万円以下の土地は、いま免税です

相続で取得した土地のうち、不動産の価額が100万円以下のものは、登録免許税がかかりません。根拠は租税特別措置法84条の2の2第2項で、期限は令和9年(2027年)3月31日までです6,7。

この措置は、もともと一部の地域に限られていました。法務局は、令和7年度の税制改正で適用期限が令和9年3月31日まで延長されるとともに、適用対象が全国の土地に拡充され、不動産の価額が100万円以下の土地であればこの免税措置が適用されることになった、と説明しています8。名寄帳で出てきた山林や畑、私道の持分は、ここに入ることがあります。

1申請書に書かないと、免税になりません

法務局は、免税の根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があるとしたうえで、記載がない場合は免税措置を受けられない、と明記しています8。書く文言は「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」です8。

2判定するのは土地ごとです

条文は「不動産の価額が百万円以下であるとき」と書いています6。法務局は、一部の土地だけが免税対象になる場合の申請書の様式と記載例を別に用意しています8。持分を取得した場合は、その不動産全体の価額に持分の割合を乗じた額で判定します8。

3建物には、この措置がありません

国税庁の資料の表に挙がっているのは「土地の所有権の保存登記」と「相続による土地の所有権の移転登記」の2つだけです7。建物は、価格がいくらでも1,000分の4で計算します2。

登録免許税の免税措置の適用を受けるためには、免税の根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があります。

法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」8

この免税には、終わりの日が決まっています

令和9年(2027年)3月31日までに受ける登記が対象です6,8。これは、2024年4月1日より前に相続を知っていた場合の相続登記の期限(2027年3月31日)と同じ日です9。

期限のあとに延長があるかどうかを、当サイトでは判断できません。手元に価格の低い土地があるなら、期限の内側で済ませておくほうが確実です。

名義が、ひとつ前で止まっているとき

祖父名義のままの土地があって、相続するはずだった父も亡くなっている。片付けの現場では、よく出てくる形です。この場合にも免税措置があります。

租税特別措置法84条の2の2第1項は、相続により土地の所有権を取得した個人が、その相続による移転登記を受ける前に死亡したときは、令和9年3月31日までにその死亡した個人を登記名義人とするために受ける登記について、登録免許税を課さないとしています6,7。祖父から父への1次相続の登記が、免税になるということです。

ただし、そこから先は別です。

「B」から「C」への相続によるその土地の所有権の移転登記については、この免税措置の対象とはなりません。

国税庁「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」(令和8年4月)7

Aが祖父、Bが父、Cがご自身にあたります。免税になるのは、亡くなった父を名義人にするための登記までです。そこから自分の名義に移す登記には、通常どおり1,000分の4がかかります2。

この場合も、申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」と記載しなければ免税は受けられません8。なお法務局は、Bが生前にその土地を第三者に売却していた場合でも、1次相続についての相続登記の登録免許税は免税になる、と注記しています8。

数次相続の申請書は、通常の相続登記とは様式が分かれています。法務局のページに様式と記載例が置かれているので3、書き方そのものは、管轄の法務局にご相談ください。当サイトでは判断できません。

複数の不動産を、ひとつの申請書で出すとき

実家の土地と建物、それに私道の持分。ふつうは1件ずつではなく、まとめて1通の申請書で出します。このときの計算の順番が決まっています。

課税標準額の計算に当たって、複数の不動産を同一の申請書で申請するときは、それぞれの不動産の固定資産課税台帳の価格の合計額から、1,000円に満たない額を切り捨てる。

法務局「登録免許税の計算」1

1件ずつ切り捨ててから足すのではなく、足してから切り捨てます。たとえば価格1,234,567円の土地と3,246,600円の建物を1通で出すなら、合計4,481,167円から1,000円未満を落として課税価格4,481,000円、これに1,000分の4を掛けて17,924円、100円未満を落として17,900円という順になります1,5。

免税になる土地が混ざっている場合は、扱いが変わります。法務局は、そのための「申請書の記載例(一部の土地が免税対象の場合)」を、通常の記載例とは別に用意しています8。また、免税される場合には課税価格の記載自体が不要になる、とも案内しています3。どの土地が免税に当たるかを先に仕分けてから、残りを合計してください。

土地と建物で税率が違う登記もあります

相続の場合は土地も建物も1,000分の4なので、合計してから計算できます2。一方、売買では土地が1,000分の15、建物が1,000分の20と分かれるため、法務局はそれぞれの課税標準に税率を乗じた額を合計してから100円未満を切り捨てる、という手順を示しています1。

相続で受け取った不動産だけを1通にまとめる限り、この手順を踏む場面はありません。

建物が現に無いのに登記だけ残っている場合は、相続登記ではなく建物の滅失登記のほうを先に確かめてください。登記の対象そのものが変わります。

納め方と、この税のほかにかかるもの

納め方は2つあります。原則は現金で国(税務署等)に納付し、その領収証書を申請書に貼り付けて提出します4,1。ただし税額が3万円以下である場合その他特別の場合には、収入印紙を貼って納められます4,1。

領収証書も収入印紙も、申請書に直接貼らずに白紙(収入印紙貼付台紙)に貼り、申請書とつづって契印をします1。免税になる場合は、この台紙自体が要りません3。

かかるもの金額
登録免許税(相続による所有権の移転)課税価格の1,000分の4。最低1,000円2,4
抵当権の抹消、住所・氏名の変更などを同時に出す場合不動産1個につき1,000円。同一の申請書で20個以上の登記の抹消をする場合は20,000円1
戸籍・住民票・登記事項証明書などの実費市町村と法務局で決まっています。当サイトでは一覧にしていません
司法書士に頼む場合の報酬当サイトでは判断できません。公的な相場の資料がないためです

登録免許税と抹消登記の額は法務局「登録免許税の計算」1および登録免許税法4によります。

報酬について書けないことは、そのまま申し上げます。ただ、登録免許税のほうは、ご自身で申請しても司法書士に頼んでも同じ額です。先に税額を出しておけば、見積を受け取ったときに、どこまでが国に納める分でどこからが報酬かを切り分けられます。戸籍を何度も出さずに済ませたいときは、法定相続情報一覧図もあわせてご覧ください。

期限のほうも、確かめておいてください

相続登記は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならないと定められています10。2024年4月1日より前に相続を知っていた不動産の期限は2027年3月31日です9。詳しくは相続登記の義務化に書きました。

遺産分割がまとまらず間に合いそうにないときは、相続人申告登記という申出があります。法務省は、この申出について登録免許税は不要としています11。ただし名義は移らないので、分割がまとまったあとに、あらためて登録免許税がかかります。

この記事の要点

よくあるご質問

納税通知書の「課税標準額」で計算してもいいですか

使いません。法務局は、固定資産課税明細書で一般的に「価格」または「評価額」と表記されている価格を使い、「固定資産税課税標準額」ではないと明記しています。明細書が見つからない場合は、市町村役場が発行する証明書で確認できます。1

私道や山林で、価格がついていない土地があります

固定資産課税台帳に登録された価格がない場合は、登記官(登記所)が認定した価額が課税標準になります。法務局の案内では、公衆用道路(私道)などがこれに当たる例として挙げられています。金額は当サイトでは出せませんので、その不動産を管轄する登記所にお問い合わせください。2,1,3

100万円以下の土地なら、黙っていても免税になりますか

なりません。法務局は、免税の根拠となる法令の条項を申請書に記載する必要があるとしたうえで、記載がない場合は免税措置を受けられないと書いています。相続による所有権の移転登記なら「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と記載します。8

司法書士に頼むと、いくらになりますか

公的な相場の資料がないため、当サイトでは判断できません。報酬は事務所ごとに決められています。一方、国に納める登録免許税は、ご自身で申請しても司法書士に頼んでも同じ額です。見積を受け取ったら、この記事の手順で出した税額と照らして、報酬の部分を切り分けてください。

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出典

  1. 法務局「登録免許税の計算(R8.7.27更新。課税標準は固定資産課税台帳の価格で、課税明細書の「価格」又は「評価額」であり「固定資産税課税標準額」ではない。1,000円未満切捨て・1,000円未満なら1,000円。相続による移転は1000分の4。税額は100円未満切捨て・1,000円未満なら1,000円。複数不動産を同一申請書で出すときは価格の合計額から1,000円未満切捨て、税率が異なるときは税額の合計から100円未満切捨て。抹消・住所氏名変更等は不動産1個につき1,000円、同一申請書で20個以上の抹消は20,000円。納付は原則現金、3万円以下は収入印紙)」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001467400.pdf(2026-09-05取得)
  2. 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表([令和8年4月1日現在法令等]。土地・建物とも「相続または法人の合併による所有権の移転」は1,000分の4で軽減税率欄は「-」。課税標準の「不動産の価額」は固定資産課税台帳に登録された価格が原則、価格がない場合は登記官が認定した価額)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm(2026-09-05取得)
  3. 法務局「相続登記申請手続のご案内(法定相続編)(R8.4.10更新。課税価格は固定資産課税台帳の価格で、複数不動産は合計額から1,000円未満切捨て。公衆用道路(私道)など価格がない場合は法務局が認定した価格。免税される場合は課税価格の記載が不要で、登録免許税欄に「租税特別措置法第84条の2の2」と記載。免税の場合は収入印紙貼付台紙も不要)」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001437204.pdf(2026-09-05取得)
  4. e-Gov法令検索(デジタル庁)「登録免許税法(昭和42年法律第35号)第10条(不動産等の価額。第2項は持分の割合を乗じる)・第15条(課税標準の全額が千円に満たないときは千円)・第19条(税率適用後の額が千円に満たないときは千円)・第21条(現金納付)・第22条(税額3万円以下は印紙納付可)・別表第一 一(一)保存=千分の四/一(二)イ 相続又は法人の合併による移転=千分の四/ハ その他の原因による移転=千分の二十」https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035(2026-09-05取得)
  5. e-Gov法令検索(デジタル庁)「国税通則法(昭和37年法律第66号)第118条第1項(課税標準の千円未満の端数・全額を切り捨てる)・第119条第1項(確定金額の百円未満の端数・全額を切り捨てる)」https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066(2026-09-05取得)
  6. e-Gov法令検索(デジタル庁)「租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第84条の2の2(相続に係る所有権の移転登記等の免税)第1項=登記を受ける前に死亡した個人を登記名義人とする登記は令和9年3月31日まで非課税、第2項=令和9年3月31日までの土地の保存登記・相続による移転登記で不動産の価額が100万円以下のときは非課税」https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026(2026-09-05取得)
  7. 国税庁「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について(令和8年4月・税務署。免税1=租税特別措置法84条の2の2第1項、免税2=同条第2項、いずれも適用期限R9.3.31まで。表に挙がるのは「土地の所有権の保存登記」と「相続による土地の所有権の移転登記」の本則0.4%→免税のみ。イメージ図の注に「「B」から「C」への相続によるその土地の所有権の移転登記については、この免税措置の対象とはなりません」)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018003-081-01.pdf(2026-09-05取得)
  8. 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について(更新日2026年4月1日。令和7年度税制改正で適用期限が令和9年3月31日まで延長され、100万円以下の免税の対象が全国の土地に拡充。持分の場合は不動産全体の価額に持分割合を乗じた額が不動産の価額。「租税特別措置法第84条の2の2第1項/第2項により非課税」と申請書に記載しないと免税措置は受けられない。一部の土地が免税対象の場合の様式・記載例を別掲)」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html(2026-09-05取得)
  9. 法務省民事局「相続登記の申請義務化に関するQ&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html(2026-08-12取得)
  10. e-Gov法令検索(デジタル庁)「不動産登記法(平成16年法律第123号)第28条・第30条・第57条・第76条の2・第76条の3・第76条の5・第164条」https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123(2026-08-12取得)
  11. 法務省「相続人申告登記について(単独申出可・押印/電子署名不要・登録免許税不要)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html(2026-08-18取得)

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